ご存じの方も多いだろうが、五輪ライセンス商品は言うほど「バカ売れ」するようなモノではない。例えば、五輪・パラリンピックの国内最上位スポンサーにあたる「ゴールドパートナー」だったスポーツ用品大手のアシックスは、日本選手団が表彰式で着用したウェアやボランティアのユニホーム、公式応援Tシャツなどを手がけたが、売れ行きは芳しくなく、オリパラ関連の収支が赤字だったと明らかにしている。
もちろん、これは「無観客五輪」によって、会場周辺でTシャツやらを販売できなかった影響もあるのだが、そもそも日本の消費者が「五輪ライセンス商品」にそこまで思い入れがないことも大きい。
野村総合研究所が閉会式直後に全国の20〜60代の男女3564人に実施したアンケート調査では、オリンピックを機に「東京2020オリンピック大会関連グッズ(Tシャツ、キーホルダー、ポスターなど)」を購入したのはわずか2.6%しかいなかった。そして注目すべきは、実に91.7%が「東京2020オリンピック大会を機に購入した商品はない」と回答しているのだ。
賛否はあったが、いざやったら国民の多くはメダルラッシュに大盛り上がりで「夢をありがとう」と感動をする人もたくさんいた。が、だからと言って、五輪エンブレムがついた商品を爆買したり、お祭りムードに浮かれて財布のヒモが緩んだりするほど、消費者は単純ではないのだ。
このようなシビアな現実から、スポンサー企業の「費用対効果」の悪さも指摘されていた。IOCや組織委員会に多額のスポンサー料を払ったところで宣伝効果も微妙で、ブランドイメージが爆上がりするわけでもない。ましてや「実利」も少ないとなれば当然だろう。
そんな「費用対効果の悪い五輪」に、「裏金」まで突っ込むAOKI経営陣の判断にモヤモヤする人も多いのではないか。
国立競技場の工事を落札するとか、警備業務のすべてを受注するという超巨大事業ならば、決定権のある人間とズブズブに癒着することは、構図としては理解できる。許されることではないが、営利企業として「危ない橋」を渡るだけの見返りがあるからだ。
ただ、AOKIが便宜を図ってもらおうとしたのは「スーツ」だ。正直、そこまで巨大なカネを生むものではない。また、スポーツアパレルならばアスリートの活躍でドカンと売れるかもしれないが、「メダルに感動したからスーツを買おう」という発想にはなりづらい。つまり、逮捕覚悟で汚職をするほど「うまみ」がないように見える。
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