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富士通・時田隆仁社長に聞く「ジョブ型組織への変革」不確実な世の中にどう対応するか?(2/2 ページ)

» 2022年09月15日 05時00分 公開
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年俸3500万円制度の導入状況は?

――2020年4月に導入した、最高で年俸3500万円で処遇する「高度人材処遇制度」の状況はどうですか?

 今は時流といいますか、サイバーセキュリティーのスキルがある人材を求めています。AIもですね。すでに認定し、処遇している人はいます。

――新卒の採用は年功序列を前提とした採用です。人事制度改革という意味で、今後は変わっていくのでしょうか?

 今は、新卒が7割でキャリア採用が3割です。今後は半々になっていく方向になるでしょう。2年ほど前だったと記憶していますが、コロナ禍によって新卒の採用がずれこむことがありましたが、富士通は影響ありませんでした。いつでも入社できるシステムを構築したからです。

富士通の採用サイト

――コロナ禍でリモートワークなど、働き方に幅ができました。一方で本田技研工業は、「原則出社」という方針を打ち出していますね。

 緊急事態宣言中は、政府は出勤者の7割削減をよびかけていました。その時の当社の出勤率は18%ほどで、リモートワークも約8割に達しました。今でも大きく数字は変わっていません。感染が収まった後も「職場に帰ってこい」とは言いません。

 それは先ほど述べたように社員に自律してほしいからです。もちろん、当社は工場を持っており、そのラインを止めるわけにはいかないので、現場で工夫した感染対策の徹底をしながら稼働しています。ですが、工場にも「出社しなさい」とは言っていません。

――ロシアによるウクライナ侵攻でグローバル化の流れにブレーキがかかりました。特にイデオロギーの異なる国でのビジネスについて、どのように考えていますか?

 非常に難しいです。この問題が存在しているのは事実ですから、グローバルカンパニーとして、経済状況や地政学を含めて精査して対応していくことになります。私は「遠い国のことだから…」とは言っていられない「洗礼」を受けましたし、感度とレスポンス力をさらに上げないといけないことを学びました。

 ロシアに拠点はないですが、お客さまはいますから、それに対するレスポンスは早くしないといけないでしょう。サプライチェーンも同じで、グローバル企業として、どう対処していくべきかという学びは多かったです。

――座右の銘や経営者としてのポリシーを教えてください。

 「ない」です(笑)。社長就任時の囲み会見の時に広報から「絶対聞かれますよ」と言われたのですが、同じ答えをしました。経営者のみなさんは素晴らしいことを言われますが、私は考えたこともないですし、考える余裕もないです……。あったほうがいいんでしょうけどね(大笑)。

時に厳しく最適解を探す姿勢

 以上が時田氏へのインタビュー内容だ。日本企業では、新卒採用、終身雇用、年功序列、成果主義、高度人材、キャリア採用、ジョブ型などが未だに複雑に絡み合っており、日本を代表する企業である富士通は1つの縮図かもしれない。

 加えて、グローバル、ダイバーシティ、日本人の安定志向なども重なっており、時田社長は、時には厳しいやり方であると認識しながらも、何とか最適解を見つけ出そうとしているように見えた。22年は中期計画の最終年だけに、ある程度の答えは、そう遠からず見えてくる。

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