例えば、太氏が初めて「自分が欲しい」と思えるような高品質なテントを開発したら、価格が16万8000円になったという。当時、キャンプは「お金を使わずに楽しめるレジャー」という位置付けで、テントの価格も2万円程度だったというから、いかにこのブランドが革新的だったかがうかがえよう。
ただ、太氏が社長に就任した96年当時は、キャンプブームが下火になり売り上げも落ちる一方だったという。そこから起死回生できたのは、スノーピーカーのおかげだ。太氏はユーザーを招いて、一緒にキャンプをしながら生の声を聞くという「Snow Peak Way」をスタート。そのようにファンの要望を聞いているうちに、2000年度以降、約20年に渡って成長基調を継続して、05年度からはなんと16期連続での増収を達成したというわけだ。
現在は韓国、台湾、中国、米国など海外でもブランドを展開。事業もアパレルだけではなく、ビジネスソリューション、地方創生コンサルティングなど多岐に及んでいる。
さて、このような日本人好みの「品質と顧客を大切にして成長した」というサクセスストーリーを聞いていると、スノーピーカーになる人の気持ちも分からんでもないと思うかもしれないが、スノーピークの強さの秘密はまさしくそこにある。つまり、このブランドストーリーや理念などを広めて、それを支持するファンをたくさんつくるという「ファンビジネス」に成功したからなのだ。
例えば、スノーピークは社会的使命として、「人間性の回復と、自然指向のライフバリュー」を掲げていて、それを体現するようなイベントを頻繁に開催している。その代表が「Snow Peak Way」で、社員とスノーピーカーが焚き火を囲んでコミュニケーションをするだけではなく、ラジオ体操やワークショップなども多数行い、社員とスノーピーカーの結束を強めている。
典型的なファンビジネスを実践しているわけだが、アンチの人々はそれが面白くない。「宗教みたい」「情報弱者をカモにしている」などと批判・揶揄(やゆ)しているのだ。
そこでよく槍玉に上がるのが、スノピークポイントカードだ。この会員数は22年6月末で約71万8000人に上る。スノーピーク商品をたくさん購入したり、関連施設をたくさん利用したりすればポイントがたまって、シルバー、ゴールド、プラチナ、ブラック、サファイアとランクが上がって、それぞれ限定イベントに参加できるなどの特典がある。
ただ、そのポイント設定が、「スノーピークを永遠に買い続けさせようとしていてエグい」と一部から批判されている。例えば、サファイアのポイントは300バリューポイントで、300万円分の購入である(体験サービスの場合はポイント2倍)。
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