さて、そこで気になるのは、なぜこんなおかしな現象が起きてしまったのかということだろう。いろいろな見方があるだろうが、筆者はスノーピークが他のブランドと一線を画する独自のポジションを確立してきたことの「代償」というか、副作用的なものだと考えている。
具体的に言えば、戦略的なファンビジネスによって、「スノーピーカー」という熱狂的なファンをたくさんつくってきた反動で、多くの「アンチスノーピーク」をつくってしまった。彼らはいつもは陰口を言っている程度なのだが、それが「社長の不倫」をきっかけにテンションが上がってしまい、ネットやSNSでの誹謗中傷やデマになってしまったのではないだろうか。
「スノーピーカー? アンチ?」と首を傾げている方にも分かっていただくには、まずは日本のキャンプ愛好家の間で、スノーピークというブランドがどのように捉えられているかを知っていただく必要がある。
キャンプなどをしない方からすれば、「スノーピーク」と聞くと、「商業施設の中で最近よく見かける、テントとかと一緒に服とかも売っているおしゃれブランド」という印象を抱くかもしれないが、実はその歴史はかなり古く、一言で言ってしまうと、「3代続く老舗高級アウトドアブランド」である。
創業は1958年。金属加工技術で知られる新潟県燕三条で、初代会長で登山家だった山井幸雄氏が、金物屋「山井幸雄商店」を立ち上げて、オリジナルの登山用品の開発・販売をしたことが始まりだ。
ちなみに、登山家が満足できるギアがなくて、自分自身でつくってしまうというのは、パタゴニアやモンベルにも見られる、“アウトドアブランド創業あるある”だ。
その後、86年に息子で現社長の山井太氏が入社してからオートキャンプブラントとしてリニューアルして、「スノーピーク」というブランドがスタート。そこで現在まで貫いているのが「品質と機能性を重視した高価格帯路線」である。
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