この成長性を背景にヘルスケアマーケットへは大手、ベンチャー、製薬会社から食品・飲料メーカー、IT企業までさまざまなプレーヤーが参入を試みてきました。
米アップルのCEOティムクックは19年、CNBCのインタビューにおいて「未来から現代を振り返り、“Appleが人類にもたらした最大の貢献はなんだったのか”と問うならば、その答えは“健康”になるでしょう」と述べています。
同社はApple Watchによる健康データ管理のみならず睡眠、心臓、呼吸、血糖値、認知症などさまざまな分野のサービスやテクノロジーを展開しています。世界をけん引するアップル、アマゾン、グーグル、ウォルマートなどが積極果敢にヘルスケアマーケットに取り組んでいます。
日本においては、各社が手を組んで新たなサービスを開発する動きが盛んです。塩野義製薬は注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもたちの注意機能改善に寄与するゲームを手掛ける米Akili Interactive Labsと戦略パートナー契約を結び、サービス開発を推進。第一生命保険は視覚認知テストにより認知症の予兆を検出するツールを開発した米Neurotrackと事業提携を行い、認知症保険の付帯サービスとしてアプリを提供しています。
こうした事例以外にも、ホンダとドイツnooneeによる腰痛防止のウェアラブルチェア開発、オムロンヘルスケアと米AliveCorの心電計と血圧計の一体化、SOMPOホールディングとイスラエルのBinah.aiによるストレスチェック&血圧測定など、各社のリソースを活用した事業連携が増加しています。
しかし、これら多くの取り組みもまだ道半ばという様相です。
ヘルスケアビジネスのゴールとは何でしょうか。サービス提供企業が数千億円規模に拡大することでしょうか、それとも数千万人規模の健康に貢献したという成果の数値が出ることでしょうか。
このゴール設定、ヘルスケアビジネスの意義をどこに置くかによってこれから歩む道は大きく変化します。
「N-NOSE」というがんの検査サービスがあります。テレビCMで見てご存じの方も多いのではないでしょうか。
人間ドックの「腫瘍マーカー」の場合、早期のがんの検知精度は10%程度ですが、N-NOSEなら86.3%という高感度でがんを検知できるそうです。キット代は1万2500円〜という価格で、病院で受けるがん検診よりもリーズナブルです。21年度の売り上げで30億円以上、22年度は120億円を目指しているそうです(出所:21年11月TBS系「がっちりマンデー!!」での同社コメントより)。
売り上げ120億円と1万2500円という数字から推計すると、年間約96万人がこのサービスを利用していることになります。96万人の人たちの中には、ネガティブな結果が出ずに安堵する人もいれば、早期発見をして命を救われる人もいると思われます。これは、今まで人類が達成することが出来なかった一つの大きな価値です。では、これがヘルスケアビジネスのゴールといえるでしょうか。同社の経営哲学やビジネス構想によっては、まだビジネスが軌道に乗り出した段階と捉えることもできるかもしれません。
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