将来の売り上げを今、現金化 レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)とは?金融ディスラプション(3/3 ページ)

» 2022年09月30日 17時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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「将来の売上債権」とは法的には何なのか

 興味深い仕組みのRBFだが、法的な側面にも触れておきたい。いわゆる融資は、銀行法や貸金業法で規定され、上限金利など利用者保護の観点などで規制されている。

 一方で、RBFは「将来債権の買い取り」という仕組みであるため、貸金業には当たらない。受け取るのは手数料であり金利ではなく、特段規制する法律も存在しない。ただし根拠となるのは20年に改正された民法だ。すでに確定した債権の買い取りは、いわゆるファクタリングとして広まっているが、RBFのような未確定な債権も明確に定義された。「民法改定で将来債権が定義された。それまでも取り引きはできたが、これが定まったことで法的完全性が高まった」(安倍氏)

 とはいえ、企業の将来の売り上げを元に評価してお金を貸す融資と、将来の売り上げを買い取って現金を渡すRBFは、実質的には同じものではないか? という疑問もある。しかし宇野氏はまったく別ものだと話す。

 「融資は信用供与であり、売り上げが立っていなくても返済はしなくてはならない。しかし、RBFでは売上債権が取り消しになって発生しなければ、返済の義務はない。例えばコロナショックなどで売り上げがゼロになったら、こちら(RBF事業者)側のデフォルトとなる」(宇野氏)

Yoiiの宇野雅晴社長(Yoii提供)

 このように、売上債権の扱いのためRBF事業者側のリスクも高いが、有利な点もある。例えば金利ではなく手数料扱いのため、上限金利を守る必要がない。例えば手数料10%で3カ月返済なら、実質金利としては40%近くに相当する。また、融資の場合は最初に返済額を確定しておく必要があるので、RBFの特徴の1つでもある定率返済は実現しにくい。

 いずれにせよ、企業の資金調達手法に新たな選択肢が生まれるのは素晴らしいことだ。融資などの伝統的な手法は法律でガチガチに規定されているだけでなく、ライセンスを取得したりコンプライアンス順守のためのコストが非常に大きい。利用者保護やAMLは非常に重要なことだが、それが参入障壁となり利権化したり、変化する利用者のニーズに対応できないといった弊害もある。

 そんな中、新たなニーズをカバーするRBFへの期待は大きい。現状、D2CやSaaS事業に対象が限定されてはいるものの、株式とも融資とも違う資金調達の方法として期待される。

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