将来の売り上げを今、現金化 レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)とは?金融ディスラプション(1/3 ページ)

» 2022年09月30日 17時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 フィンテックの進展が、資金調達の分野でもイノベーションを起こしている。注目の1つが、レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)だ。企業の将来の売り上げを債権として買い取ることで、企業は資金を調達できるという新たな手法だ。海外ではスペイン発祥のキャップチェイス(Capchase)や加クリアコ(Clearco)などが、RFB事業を拡大している。

 この分野を手がける国内スタートアップも実績を積みつつある。2019年創業のFivot(東京都港区)はサービス開始から1年半が経過し、21年創業のYoii(東京都渋谷区)はプレサービスを経て、4月には正式版の提供を開始した。

 RBFには既存金融機関も注目している。Fivotが9月にシリーズAラウンドとして10億円の資金を調達した際には、金融系ベンチャーキャピタルだけでなく、三井住友銀行も名を連ねた。また同じく9月にプレシリーズAとして4.8億円を調達したYoii(東京都渋谷区)には、三菱UFJ信託銀行などが出資している。

企業の将来の売り上げを買い取る

  ではRBFとは何か。「シンプルに言えば、企業の将来の売り上げを買い取るサービスだ」とFivotの安部匠悟社長は説明する。

すでに確定している債権を買い取るのがファクタリング、未確定の将来の売上債権を買取るのが「レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)」だ(Fivot資料より)

 ある企業が毎月1000万円ずつ売り上げを立てていたら、例えばそのうちの売り上げ100万円を6カ月に渡って「将来債権」という形で買い取る。将来の売上債権600万から手数料ーー例えば10%を引いて、540万円を代金として企業に渡す。企業が目論見どおり売り上げを立てたら、そこから債権分の100万円を6カ月に渡ってRBF事業者に返済するという流れだ。

 企業側からすると、未来の売り上げを今すぐ現金にできるというメリットがある。運転資金が必要となるD2C事業や、広告宣伝費が先行しがちなSaaS事業では、特にこのメリットは大きい。SaaS提供企業の中には、月額課金ではなく年額前払いだと15%以上の割引を提供するところもあるが、それだけ現金を先行して得られるメリットが大きいということだ。

 しかしなぜ銀行融資ではなく、RBFが注目されるのか。それは企業、特にスタートアップの資金調達ニーズが、伝統的な手法とマッチしなくなった現状がある。Yoiiの宇野雅晴社長は「企業の資金調達手法は長らく変化がない。株式発行(エクイティ)による調達は時間がかかる。融資(デット)はスタートアップにとっては難しい」と話す。

株式と社債や融資といったデット系の資金調達手法の間に、空白のニーズがある。そこを埋めるのが「レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)」だ(Yoii資料より)

 昨今銀行はスタートアップを支援するとうたうものの、事業が赤字で担保にできる不動産もないスタートアップへの融資は、銀行の既存融資の枠組みでは難しい。増資によるベンチャーキャピタルからの資金調達はメジャーな調達手法になったが、コロナバブルが弾けIPO市場が冷え切った現在、企業評価額のベースとなる指標が大きく落ち込んでいる。

 そんな中で、赤字であっても将来の売り上げをもとに資金が調達できるRBFに注目が集まっているわけだ。

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