自治体DX最前線

さいたま市を“幸福度ランキング”1位に押し上げた、10年来のスマートシティ構想自治体DX最前線(3/4 ページ)

» 2022年10月24日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

データから見えてきた超高齢化社会の課題

 「ミソノ・データ・ミライ」プロジェクトでは、美園タウンマネジメント協会(さいたま市、イオングループ、タニタヘルスリンク、慶應義塾大学などが企画運営)の事業の一つとして、、筑波大学大学院の監修のもと、19年9月にプロジェクト参加者を募集した。さいたま市美園地区周辺に住んでいる、または勤務している20歳以上の100人だ。

 市民から提供されるデータは、スマートウォッチやスマート歯ブラシ、体組成計などから得られる健康に関係したデータ、WAONカード利用状況に基づく購買履歴、住宅のセンサーが測定する室温や湿度などの住環境に関するものだ。集めたデータは、データ基盤システム「共通プラットフォームさいたま版」に蓄積。健康促進のための提案を行える企業にデータを提供した。

 市民からすると、情報の提供に抵抗はなかったのだろうか。有山氏は「データを扱うための規約を整備することはもちろん、情報活用に関連した知識が豊富な弁護士に入ってもらったこと、説明会をしっかりと行ったこと、自治体が連携していることから安心感を得てもらい、心理的ハードルを下げることができた」と説明する。

photo 「行政が入ると、市民からの安心感が高まる」という

 また「収集したデータから、どの栄養素が足りないのか、それを補うためにはどのような料理が良いのか、などを提案することで、いわゆる“おばあちゃんの知恵袋”をデジタルで再現した。データ提供者にとっては、これがメリットとして映った」と有山氏は付け加える。

 「ミソノ・データ・ミライ」プロジェクトの実証実験は19年10月22日〜20年1月26日の3カ月にわたって行った。現在は都市OSにデータ連携サービスを実装する準備段階に入っているという。

 その一つがガバメントピッチによるベンチャー企業とのマッチングだ。これは、ヘルスケア分野の地域課題の解決に向けて関東経済産業局が21年10月25日に開催したものだ。参加した6自治体の抱える課題に対し、ベンチャー企業が合計76の課題解決案を提出することでマッチング。自治体とベンチャーで連携して実証実験を行うものだ。

 「ミソノ・データ・ミライ」プロジェクトで取得したデータから、見えてきた主な課題は健康に関連したもので、「社会保障費の上昇という事実と合致する」と有山氏は分析する。「腰痛、歯周病といった見過ごされがちな病気が認知症につながり、被介護者の増加という結果を生んでいる。意識している人であれば、自分で調べて予防するが、そうでない人にも疾病リスクを減らしてもらうべくベンチャー3社と協力して、健康意識を高めるような行動変容を促していきたい」と意気込む。

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