――表面の赤と黒が混ざり合った色合いもリアリティが出ていますね
高橋: 能登では「船凍イカ」といって、船上で急速冷凍させていて、鮮度の良さと品質の高さで知られています。生きているイカは透明ですが、死ぬと白くなります。船で凍らせた能登の船凍イカは、赤黒い色がしっかり残った状態で水揚げされます。モニュメントもその色を目指しました。
当初、製作中のイカキングは白色が多く「これは死んだイカ」などと言われました。設置現場で「もうちょっと赤くやりますか」などと話し合い塗装を足しました。でもやりすぎると今度は「イカ焼きになった」などと言われ、色のバランスは難しかったです。
――製作期間中、心掛けていたことなどはありますか?
高橋: 願掛けに、たこ焼きは食べませんでした。ひたすらイカを食べ、イカに襲われる夢を見るほどでした。
――「税金のムダ遣い」などと批判も起きました。耳にしてどう思いましたか?
高橋: 私たちは町の要望に一生懸命応えて前に進むだけでした。私たちはできたものはすごいと、見てもらえば分かってもらえると思っていました。批判には腹も立ちましたが、それが宣伝効果にもなり、今となってはありがとうございます、という気持ちです。
近村: 実際に別の自治体でも同様の批判が起きており、もしかしたら能登町も批判されるのではないか、と事前に聞いていました。ですから、批判が来たときは、やっぱり来たかと、割と冷静に受け止めることができました。
能登町はイカキングの建設費約2700万円のうち、2500万円を国のコロナ交付金で賄った。これに対し、町内外から「医療に充てるべき」「税金のムダ遣い」などと批判が噴出した。国内メディアだけでなく、英BBCや米NYタイムズなど、海外メディアも取り上げた。
ただ、国が想定するコロナ交付金の用途には「感染拡大の防止」や「医療体制の整備」「雇用の維持」などのほかに「経済活動の回復」といったものもある。地方創生に資する事業であれば幅広く活用できると規定されており、町としてもイカキングの製作は、間違った税金の遣い方だとは考えていなかった。
町ふるさと振興課の下谷内さんは「国や行政の説明不足もあり、コロナ交付金は感染症対策にしか使えないというイメージが独り歩きしてしまった」と話し、情報発信に課題があったと指摘する。
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