町は誤解を解くため、町内外から寄せられる批判や苦情に一つひとつ対応し、町の意図を根気強く説明した。国内外のメディアから寄せられる取材にも応じた。丁寧な説明を心掛けることで「住民の理解やメディアの論調にも、徐々に変化が見られるようになってきた」と下谷内さんは話す。
町が8月末に発表した、イカキングの経済効果。石川県内における経済効果は、イカキングが設置された21年4月〜22年7月の16カ月間で、約6億円に上ると公表した。町が投じた建設費2700万円の約22倍に上る。
経済効果は町の公募に応じたコンサルタントが算出し、イカキングを目的に訪れたと考えられる観光客の宿泊費や飲食代、イカキングの建設費用などが含まれるという。また、マスコミなどに取り上げられることによる宣伝効果も18億円に上るという。
下谷内さんはイカキングが成功した要因について、「マスコミが取り上げた効果」に加え、モニュメントを360度どこからでも触れることができる点を挙げた。
完成当初に巻き起こった批判的な報道には、コロナ禍にあえぐ地域の苦境に、理解が及んでいないと思われる指摘も多々あったという。
「やはり、地域には地域にしか分からない苦しみ、『イカの町』の苦しみがある。実際に来て、見てもらうことで、理解してもらえる部分もあったのかなと思う」と下谷内さんは話す。
ヨシダ宣伝の近村さんは最近、うれしい光景に遭遇したという。イカキングを背景に、結婚式の前撮りをするカップルがいたといい、「自分たちが作ったスポットを思い出の場所として選んでくれたのがうれしい」と話す。
高橋さんも「当初は『子どもが見たら泣く』などと散々言われたが、実際には笑顔の子たちばかり。この光景を見ると、作ってよかったなと心から思いました」と話す。「メディアがどれだけ騒ごうとも『絶対にいいものにしてやる』と町の人、職人さんたちと一致団結して超真面目に作り上げました」と振り返った。
批判的な報道が結果的に大きな宣伝効果となり、経済効果につながったとされるイカキング。その裏には、批判にめげることなく、「イカの町」の復活をイカに託し、徹底的にリアリティを追い求めた町と地元企業の執念があった。
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