KDDI通信障害で注目「非常時ローミング」 ウクライナや米韓、カナダでは? 比較から日本の対応考える房野麻子の「モバイルチェック」(4/4 ページ)

» 2022年10月14日 16時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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 気になる費用負担だが、確認できている3カ国は、事業者間の協定で処理されるので民間負担となっている。

 カナダのアジェンダでも、ユーザーにはしっかり状況を伝え、周知・広報すべきとされているが、日本においてもユーザーに対する周知・広報は非常に重要な視点になる。7月のKDDIの通信障害では、周知・広報が不十分だった、分かりにくかったという指摘が多かった。事業者のWebサイトで告知しても、通信障害でデータ通信ができないので、ユーザーはサイトにアクセスして状況を把握することができない。SNSなどでは困ったユーザーがショップに押し寄せたという報告もあった。

実現を希望する機能「緊急通報」がトップ

 対象となる通信や通信品質についても検討ポイントとなるだろう。第2回会合では野村総合研究所が行った「携帯電話の通信障害に関するアンケート調査」の結果も公表された。事業者間ローミングについては、年代を問わず約4人に3人が必要と回答しているが、実現してほしい機能としては緊急通報が圧倒的に多く、まずは「人命に関わる緊急通報(呼び返しなし)を1日も早く実現することが望まれる」とまとめている。

非常時の事業者間ローミングは「必要」と考えるユーザーが圧倒的(野村総合研究所のアンケート調査より)

 一方で、日常的に使われるようになったPayPayなどのコード決済は、認証にSMSを利用することが多く、通信障害で決済できなかったケースもあった。そのため、通話やメッセージ、データ通信もローミング対象にするべきという意見もある。

実現を希望する機能は緊急通報、緊急速報メール、音声通話の順で高い(野村総合研究所のアンケート調査より)

 ローミング時の通信品質も検討すべきポイントになるだろう。ウクライナでは、携帯電話サービスが全く受けられないよりは、低品質であっても確保するという方針になっている。日本ではどう考えるかといったことも、検討会で話し合われていくことだろう。

筆者プロフィール:房野麻子

大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。


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