KDDI通信障害で注目「非常時ローミング」 ウクライナや米韓、カナダでは? 比較から日本の対応考える房野麻子の「モバイルチェック」(1/4 ページ)

» 2022年10月14日 16時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 総務省では現在、災害や通信障害で携帯電話が使えなくなっても、他事業者のネットワークを使うことで通信できるようにする「非常時における事業者間ローミングの実現」を検討している。

 第1回と第2回会合では、総務省事務局から海外における事業者間ローミングの導入例が紹介された。これから導入しようとしている日本にとって参考になる内容だ。

一般の通話、データ通信もローミング対象にしているのは4カ国

 総務省が調べたところ、非常時の通信確保を目的として、一般の通話やデータ通信も含めた事業者間ローミングを行っている国には、米国、韓国、ウクライナ、カナダがある。なお、他事業者のネットワークを利用して緊急通報ができるようにしている国はこれら以外にもある。

非常時に一般の通話やデータ通信もローミング対象とする国は4カ国ある(総務省の第2回検討会資料より)

 米国の事業者間ローミングは、2012年10月に発生したハリケーン・サンディがきっかけだ。ハリケーンの影響を受けた一部地域では、停電や物理的被害、伝送路の離断などで携帯電話基地局の4分の1がダウン。その際、ニューヨーク州、ニュージャージー州において、AT&TとT-Mobileの2事業者が通信ネットワークを臨時に共有したという。

 そしてFCC(連邦通信委員会)は今年7月、災害時の事業者間ローミングを義務化した。大規模な災害が発生したり、長時間の停電が発生したりするような緊急事態では、政府が宣言することで携帯電話事業者がローミングを実施する義務を負うという制度になった。

画像はイメージ(ゲッティイメージズ)

 韓国では、災害時にローミングを行う協定が事業者間で締結されている。18年11月、KT(Korea Telecom)で大規模火災が発生し、数日間に渡る大規模な通信障害が起こったことを踏まえ、21年、韓国政府は法律を改正し、「通信災害」が発生した場合に、科学技術情報通信部長官が移動通信事業者に対して事業者間ローミングの実施を命令できるようになった。ローミングが行われた場合、最大100kbpsのデータ通信が可能だという。

 ウクライナには携帯電話事業者が3社あるが、携帯電話サービスを維持するため3事業者間でローミングが可能になっている。

 ロシア侵攻後の今年3月、一般の通話、データ通信も対象とした事業者間ローミングが全土で実現している。3社の共同声明では、ローミングできるようにするには、ユーザーが携帯電話の設定を変えることが必要なこと、また、事業者間ローミングを実施した場合には、多くのユーザーが一部の事業者のネットワークに入ってくるため負荷がかかり、場合によってはつながりにくくなる、通信が途切れるなどサービス品質が低下すると説明されている。

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