度を超えたクレームを「丸く収めたい」上司、部下に謝罪を強要──カスハラが生んだパワハラに有罪判決弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(3/3 ページ)

» 2022年10月25日 13時00分 公開
[佐藤みのりITmedia]
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企業が取るべき対策とは?

 小売店の従業員と買い物客がトラブルになり、従業員が会社に対し、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求訴訟を提起した事例です。

 裁判所は、

  • 会社が、誤解に基づく申出や苦情を述べる顧客への対応について、入社テキストを配布して苦情を申し出る顧客への初期対応を指導し、
  • サポートデスクや近隣店舗のマネジャーなどに連絡できるようにして、
  • 深夜においても店舗を2人体制にしていた

として、店員が接客においてトラブルが生じた場合の相談体制を十分に整えていた、すなわち安全配慮義務を尽くしていたと評価しました(東京地裁2018年11月2日判決)。

photo 裁判所は、違法なパワハラと認定した(画像はイメージです。提供:ゲッティイメージズ)

 十分なカスハラ対策をすることが、企業の法的リスク回避にも役立つことが分かります。従業員が気軽にカスハラ被害を相談できる窓口を設置することや、不合理な要求をする顧客には組織的に対応するルールを定めるなど、できることから取り組みましょう。

 また、こうした対策を万全にしても、顧客側の意識が変わらないと、なかなかカスハラはなくなりません。「ハラスメントを許さない」というメッセージを記した啓発ポスターなどを活用し、顧客に対しても、企業の毅然(きぜん)とした姿勢を伝えていくことが大切でしょう。

著者プロフィール

佐藤みのり 弁護士

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慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。ハラスメント問題、コンプライアンス問題、子どもの人権問題などに積極的に取り組み、弁護士として活動する傍ら、大学や大学院で教鞭をとり(慶應義塾大学大学院法務研究科助教、デジタルハリウッド大学非常勤講師)、ニュース番組の取材協力や法律コラム・本の執筆など、幅広く活動。ハラスメントや内部通報制度など、企業向け講演会、研修会の講師も務める。


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