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「社員を束縛」してきた日本企業 少子化時代のあるべき採用の形とは?内定辞退者を中途採用(4/4 ページ)

» 2022年10月27日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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 もちろん、これらはあくまでネガティブに振り切った場合の見方です。内定受諾辞退者への優遇枠やアルムナイ制度などは、人材確保のために間口を広げることが目的なのであり、内定者や社員を会社の都合に縛りつけることを目的に考え出されたわけではないと思います。

 しかし、これまでの職場には、内定通知後の学生に他社の選考を断るよう圧力をかける「オワハラ」(就活終われハラスメント)が問題視されたり、日本企業特有の家族的な良さの裏返しとして、退職した社員を裏切り者のように見なしたりするような嫌いが少なからずありました。

社員を束縛してきた日本企業

 これらの行いの根底には、できる限り社員を束縛して思い通りにコントロールしたいと考える会社側の都合があります。かねて日本企業の特徴と言われてきた年功賃金制度にも、長く勤めるほど賃金が上がっていく仕組みにして早期退職者が損する状況をつくり出し、社員を定年まで囲い込めるようにしたという側面もあるのです。

 これまでの会社と社員の関係性に鑑みるに、会社は経営資源である社員を逃さないよう縛りつける施策を講じてきた感があります。そんな悪い癖が内定受諾辞退者への優遇枠やアルムナイ制度などにも反映されてしまうと、せっかくの施策にも好ましくない作用が働いてしまう可能性があります。

画像はイメージ

 しかしながら、終身雇用の維持が難しいと言われている時代に「社員縛りつけ戦略」にこだわっていては、Win-Winの関係性など実現できません。社員を縛りつけるのではなく、自由意思を尊重した上で、会社としての魅力を高めていかに選ばれる存在になるかという「社員引きつけ戦略」へと移行させる必要があります。

 それは言い換えると、社員が会社に従属する上下の関係性から、より社員本意の関係性へとシフトし、互いに助け合う存在として会社と社員がパートナーシップを結ぶ方向に変えていくことでもあります。そんな関係性を構築していく中で、会社がテレワークや育休取得の促進など働きやすい環境を整え、柔軟な働き方がしやすくなった社員が成果を最大化させていくような循環を生み出すことができれば、会社と社員の関係性はよりWin-Winへと近づいていくことになるのではないでしょうか。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ4万人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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