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「社員を束縛」してきた日本企業 少子化時代のあるべき採用の形とは?内定辞退者を中途採用(1/4 ページ)

» 2022年10月27日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 日本経済新聞は10月6日、「三井住友海上、内定辞退者を中途採用」と題した記事を掲載しました。内定を承諾する前に辞退した学生が新卒3年以内に中途採用を希望した場合には、2次面接までを省略できる優遇枠を用意するとのことです。

 大手企業が、内定受諾の辞退者に中途採用の優遇枠を用意するという取り組みは珍しいと思います。ただ、ファーストリテイリングやソフトバンクのように新卒層にも通年採用する仕組みを設けるなど、採用間口を広げている事例は他の大手企業にも見られます。

 ネームバリューや安定性など、新卒採用において中小企業よりも優位にある大手企業が採用対象者の間口を広げようとする背景には、抗いようのない環境変化の影響があります。大きく3点挙げたいと思います。

人手不足と少子化のダブルパンチ

 1つは、有効求人倍率が慢性的に高い状況にあることです。厚生労働省の一般職業紹介状況をもとに、コロナ禍発生前と後で有効求人倍率の四半期ごとの推移を表したのが以下グラフです。

コロナ禍前後の有効求人倍率の四半期ごとの推移。コロナ禍で底を打った時期でも求人の件数は求職者の数を下回ることがなかった(厚生労働省の一般職業紹介状況をもと筆者作成)

 コロナ禍発生前は1.5を超える水準でした。これは、求職者1人あたり1.5件以上の求人があったということです。それがコロナ禍発生によって急激に減少に転じたものの、1.05で底を打った後は再び上昇傾向となっています。

 つまり、コロナ禍で最もきつかった時期でも、求人の件数は求職者の数を下回ることがなかったということです。もちろん、個々の産業や職種においては大きく需要を減らしたケースもありますが、市場全体では労働力に対する需要は底堅く、慢性的人手不足の状態が今後も続くと予測されます。

 その一方で、労働力の元となる人口そのものは減少の一途を辿っています。それが2つ目の環境変化です。出生数の推移を見ると今後も人口は減少し続け、未来に進めば進むほど、より少ない母数の中から新卒層の人材を取り合わなければならなくなります。

画像はイメージ(ゲッティイメージズ、以下同)

 内閣府の「令和4年版少子化社会対策白書」によると、現在大学4年生の年代で、その多くが来年4月に社会に出ることとなる2000年生まれの数は119万550人。この数字を1とすると、その10年前に当たる1990年生まれの数(122万1590人)は1.03です。この10年で、新卒層の母数は3%減少したことになります。

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