そのクラウンの苦境を救うべく、テコ入れが企図されたとき、豊田章男社長は「失敗したものにいつまでもこだわってもしかたない。次へ進んだらどうだ」と言った。そして生まれたのが今回のクロスオーバーである。
過去を払拭(ふっしょく)したかのごとく新しいデザイン。トップグレードで100万円安くなった価格。Kプラットフォームへの切り替えで圧倒的に広くなった室内。そして過剰なまでの“すごみ”を備えていた限界領域での走行性能のトップエンドを慎重にカットし、超高性能から高性能へと引き下げられた。もちろんそれは価格に反映されている。
身も蓋(ふた)もない言い方をすれば、クラウンは過去を断ち切って変わったのである。それはある種の断絶であることに疑う余地はないが、一方でどうしたって連続性はそこに表れてくる。
もう少しミクロにクラウンのイメージを見てみよう。保守本流の象徴でもあり続けてきたクラウンだが、実はトヨタの数々の新技術投入のテストベッドとして、技術的には常に最先端のテクノロジーを投入してきている。トヨタが「伝統と革新」と呼ぶ部分である。
今回のクラウンクロスオーバーRSもまた、そこに一石を投じるクルマになっている。先代のとき、RSはより大きなホイールと扁平タイヤを与えられた仕様。まあ電制サスペンションなど細かいことを言えばあちこち違うが、その本質においては、ドレスアップグレードにすぎなかったと思う。
しかし今回は、全く新たなハイブリッドシステムを投入した、質的に違うクルマに仕立てて出して来たのだ。わが国では35年に、純内燃機関の新車販売禁止が検討されている。本当にそれができるかどうかは先のことで分からないが、そういう未来にも備えなくてはならない。
という状況に際して、ハイパワーなクルマをどうするかという問題が発生しているのである。これまでのトヨタのハイブリッドシステムは、システム出力を高めていくとさまざまな問題があり、従来の3.5リッターや4リッタークラスのパワートレインの後継となるハイブリッドシステムを新たに開発する必要に迫られたわけだ。
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