クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

そう来たか! クラウンクロスオーバーRS池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)

» 2022年11月14日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

問題点は

 ただし、問題がある。人間の筋力がものすごく強いと、発電機の発電能力を超えてしまう。3相の2つ、それはタイヤ+モーターもしくは発電機のどちらか限界の低いほうを超えると、それ以上の力は無駄になってしまうのだ。

 言葉を換えると、タイヤ+モーターの反力を受け止めているのは発電機なので、発電機が出せる最大反力を超えたら、それ以上の力はタイヤ+モーターに流すことができずに、流出してしまう。

 クルマに詳しい人を前提にさらに追加して説明すれば、遊星ギヤの仕組みはデファレンシャルギヤと一緒なので、片輪が空転したら、それ以上の力は反対側のタイヤに伝わらない。これと同じことになる。

 もちろん発電機を大きくして能力を上げれば解決するのだが、どこまでもは大きくできない。そうなると、3.5リッターや4リッタークラスのパワートレイン同等まで出力を上げることは難しい。そこでトヨタはオール電動化時代のハイパワーハイブリッドシステムを新たに開発することにした。こちらの仕組みは簡単で、エンジンとフロントモーターを電制湿式多板のクラッチでつないでやるだけだ。

システム構成図

 6段ATとモーターの間に発進用のクラッチと、モーターとエンジンの間にエンジン切り離し用のクラッチの2セットのクラッチを持つ。どちらも電制湿式多板である。ステップATの場合、通常トルクコンバーターを用いることが多いが、トヨタの説明によれば、トルコンのスリップロスに起因するダイレクト感の欠如を嫌って、湿式多板クラッチを使ったと言う。

 それもうそではないだろうが、それよりもパワートレインのサイズをコンパクトにするためには、サイズの大きいトルコンを使いたくなかったのだと思う。変速機が6段なのも恐らく同じ理由だが、2.4リッターターボにモーターがサポートし、さらにリヤに大出力のeAxleを備えるこのシステムの総出力は349PS。2つのモーターと過給エンジンという構成からみればトルクも太い。無理やりにも多段化する意味は薄かったと思われる。

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