なぜ若者に「純喫茶」の定番メニューが人気なの? 単なるレトロではない“昭和の喫茶”ブームの背景長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2022年11月26日 05時30分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

中野「不純喫茶ドープ」

 一方、「喫茶+酒場」をコンセプトとして、20年7月にオープンしたのが、東京・中野にある「不純喫茶ドープ」という店だ。中野駅から歩いて7分くらいかかる中野ブロードウェイの裏手、早稲田通り沿いにある。

不純喫茶ドープ中野店

 不純喫茶というのは、もちろん純喫茶をもじった造語で、もともと同所にあった喫茶店の空間をほぼそのまま使っている。店内ではピンクと青のネオンサインが妖しく光り、映えるグラスで一見クリームソーダに見えるお酒も出す。昭和の純喫茶ではなくて、酒場の機能も有した新しいタイプの令和の喫茶といった意味合いで、不純喫茶と名乗っていると見受けられた。インスタグラムにおける「#不純喫茶ドープ」の投稿数は1万を超えており、Z世代向けのSNSマーケティングの成功例として注目されている。

不純喫茶ドープの昭和プリン
不純喫茶ドープのナポリタン

 この店が評判となり、昭和喫茶復興の機運が盛り上がってきた感がある。

 同年10月には、東京・上野に2号店の上野御徒町店をオープンした。

 メインになっているメニューは、ナポリタン、ミートソース、オムライス、だし巻き卵サンド、コーヒー、ウイスキー、クリームソーダ、昭和プリンなどで、昭和の喫茶やバーでなじみのものがそろっている。

 クリームソーダにお酒を入れてカクテルにするという発想は、当時はなかったと思われるが、これが受けて居酒屋メニューとして広がっている。また、窒素ガスを用いてビールのような泡を作るアイスコーヒー「ニトロコーヒー」は最近になって人気になってきたものだ。映えるグラスも含めて、単なるレトロの復活でなく、新しい要素を効果的に取り入れている点が、話題の店となった理由だろう。支払いは現金を扱わず、キャッシュレスの決済となっている。

上野御徒町店

 22年8月15〜21日には、アパレル企業のTSIホールディングスが展開するセレクトショップ「L.H.P」とコラボしたポップアップストアも、「ラフォーレ原宿」(東京都渋谷区)にオープン。ポップアップストアでは飲食は提供せず、Tシャツなどの商品を販売。不純喫茶ドープのインテリア風にしつらえ、人気メニューの食品サンプルと写真が撮れる、フォトスポットも設けた。

 このように食だけでなく、ファッション、インテリアと多彩な文化面で、昭和レトロ喫茶の魅力を拡散しているのが不純喫茶ドープの特徴で、トレンドの発信地として機能している。

8月には、ラフォーレ原宿にポップアップストアを出店(出所:プレスリリース)

 不純喫茶ドープは、レトロな空間、映えるグラスのクリームソーダでギョーザや肉まんを食べるネオ大衆酒場「トーキョーギョーザクラブ」の系列店。トーキョーギョーザクラブは19年12月、東京・神田でオープン。コロナ禍で休業していたが、今年10月20日、十条に移転して営業再開した。

 経営はwackwack creative(東京都世田谷区)という会社。元銭湯の女湯を改装した居酒屋「不健康ランド 背徳の美味」なる店も、20年12月にオープンした。

ラフォーレ原宿のポップアップストアでは人気インフルエンサーのしなこ氏の撮影会なども実施(出所:プレスリリース)

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