昭和の喫茶やスナックを改装したような空間を、わざとスケルトンからつくる動きも出てきた。例えば、22年5月、東京・亀戸の東武亀戸水神駅の近くにオープンした「東京郊外」という喫茶店が挙げられる。赤のビロード風の椅子が印象的で、現状お酒を出していない。しかし、わりとスナック風なレトロな雰囲気の空間なので、お酒を出しても違和感はないだろう。
メニューは、オムライス、ナポリタン、プリン、クリームソーダといった昔懐かしいものが多い。一方で、ブリトー、和紅茶のような令和になって広がってきたメニューも盛り込んでいる。
このように、今日の昭和喫茶ブームは、単なる復古ではなくて、映えるグラス、ネオンサイン、クリームソーダのお酒化、ニトロコーヒーや和紅茶のような令和的新メニューなど、新しい要素を盛り込んで勃興している。そして、新感覚の大衆酒場ブームと連動して、喫茶+酒場が提案されている。
インスタグラム、TwitterなどのSNSで映える写真が拡散されて、Z世代、ミレニアル世代に受け入れられているのが特徴だ。表面をまねたエピゴーネン(模倣者)が、どんどん出現している状況にある。
しかし、若者向けの流行の恐さとして、飽きられた時に膨らんだ市場が一気に縮小するリスクもはらんでいる。小回りが利くベンチャーならいざ知らず、約200店も抱えるプロントのような大きなチェーンにとっては、昭和レトロへの傾倒は危険な賭けになる懸念がある。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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