#SHIFT

クビは4種類ある──ツイッター社の大量解雇から学ぶ、日本の「クビ論」働き方の「今」を知る(5/7 ページ)

» 2022年11月30日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

ツイッター日本法人の解雇は合法? 違法?

 ツイッター日本法人において、現在どのような条件で解雇が言い渡されているのかは情報が錯綜(さくそう)しており定かではないが、今般の米ツイッター社における解雇と同等条件(解雇予告なしの即日解雇、特別退職金として月額給与3カ月分支払)をわが国で実施した場合、果たして合法なのか、違法なのかを検討しておこう。

合法なのか、違法なのか(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 前述した「整理解雇の4要件」である「人員削減の必要性」「解雇回避努力」「人選の合理性」「手続きの妥当性」について照らし合わせて考えてみる。

 米ツイッター社の2021年12月期の連結最終損益は2.2億ドル(約308億円)の赤字だったが、現預金(現金及び現金同等物)は22億ドル(3080億円)程度を有している。一方で、ツイッター日本法人における直近3期(2019年12月期〜2021年12月期まで)の最終損益は、それぞれ4.02億円、3.73億円、4.21億円の純利益を計上。つまり日本法人は黒字なのだ。このような状況下では到底「経営危機に陥っている」とはいえず、人員削減の必要性は認められにくいだろう。

 人員削減の必要性がさほど高くない状況においては、解雇を回避するために会社側がいかほど努力したのかを問われることになる。

 今般のケースでは、マスク氏がCEO就任後1週間もたたないうちに解雇通告を出している(=30日前までの解雇予告をしていない)こと、解雇対象者は即時会社とのアクセスを遮断され、説明や協議の場も設けられなかったこと、またその後米国法人においては「解雇宣告済みながら、新機能の開発に必要なスキルを持つとされる人員などを一部呼び戻す対応を行っている」との報道もあったことから、人選基準も画一的で、解雇対象者との合意形成もできていないことが考えられる。

 さらに、経費削減や希望退職者募集、役員報酬カットなどの解雇回避努力を会社が尽くしたとは言い難い。

 従って、これまでの判例とも照らし合わせて考えると、仮にツイッター日本法人において解雇された元従業員が、解雇無効と未払賃金の支払いを求めて裁判を起こしたとすれば、解雇は無効と判断され、勝てる可能性は相当高いといえるだろう。

 労働問題に詳しいアクト法律事務所の安田隆彦弁護士も「外資系企業であれば解雇も自由に出来るかのような、間違った認識傾向は改めるべき」と警鐘を鳴らしている。

 実際、今般の解雇騒動に関して弁護士が解説した記事も多く、その全てにおいて「会社側との交渉余地はある」「専門的な交渉になるので、早めに弁護士に相談しろ」と勧めている。それは確かにその通りなのだが、従業員側に分のある事案だとしても、いざ裁判に訴え出るとなると、相応の費用も時間も要するし、何より精神的なエネルギーも必要だ。

 次の仕事を探しながら、また新しい仕事をしながらの訴訟対応もなかなか大変であるし、解決金を獲得できたとしても、弁護士費用を差し引いたらさほど手元に残らない可能性もある。そういったリスク面も踏まえた上で判断されることをお勧めしたい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.