クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

理系学生に告ぐ、日本の自動車産業は「オワコン」ではない池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2022年12月12日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

「充電事業の採算性」も問題

 もう1つの問題は、充電事業の採算性である。実際にEVを使ってみるとよく分かるのだが、基本は自宅で普通充電によってゆっくり充電して使うものだ。高電圧による高速充電は、程度によるものの電力網に負荷を掛けるだけでなく、バッテリーを痛める。だから外出先での高速充電器は日常的には使わない。

 クルマを大事にする人の中には「このクルマはまだ一度も高速充電していません」という人すらいる。それは特殊なケースだとしても、普通は、遠出する時だけやむを得ず使うのが実態なのだ。

急速充電のイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

 現在この高速充電器は1充電30分の制限が掛かっており、つまりは1台の充電器は1日最大で48回しかビジネスチャンスがない。それも1秒たりとも無駄にしないとしてである。仮に充電1回で1000円の料金を取ったとしても、稼働率がパーフェクトの100%で1日の売り上げは4万8000円。

 現実の話としては稼働率が20%を超えると充電待ちが出るということから、そのくらい回転率が良かったとして、計算上9600円、1000円刻みなのでまあ1万円というところである。しかもこれは売り上げで、ここから、売上原価として電気代や充電器の減価償却、土地代などが引かれる。保守費用だ、バックオフィスの人件費だと間接費用をカウントしていけばキリがない。とてもビジネスにはならない。赤字経営一直線である。

 補助金を使おうがメーカーが費用負担をしようが、普及率が一定以上になれば、その費用は税金か車両価格に転嫁せざるを得なくなる。そういう事業デザインはサステイナブルとはいえないのだ。

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