クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

理系学生に告ぐ、日本の自動車産業は「オワコン」ではない池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)

» 2022年12月12日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

EVの普及は重要

 ということで、EVの普及はそれなりにハードルが高い。とはいえ、CO2の抑制は社会に課せられた重要課題なので、EVの普及はとても重要な課題であるという認識は間違っていない。「EVなんて話にならない」というわけにはいかない。

 普及を進めることはとても大事なのだ。まだまだ頑張って改善していかなくてはならない。ただ、それはかなり長い大変な道のりで、都合良く破壊的イノベーションがやってきて魔法のように全てが変わるというわけにはいかないのである。一歩一歩技術を積み重ねて、未来を変えていくのであって、ブームのバスに乗ったら、イノベーションに一番乗りなどということにはならない。だからこそ優秀な理系の学生がそこに参加して、技術を向上させてくれる必要はずっとなくならない。とても重要なことなのだ。

 日本の自動車メーカーはそういうことをちゃんと考えている。だからEVの開発を行いつつ、不足が見込まれる鉱物資源を可能な限り節約して、CO2排出量を下げるハイブリッドの開発や、水素や合成燃料の利用といった多様な技術を開発して、多様なエネルギーの総力戦でCO2削減を進めようとしているのだ。

23年次「RJCカーオブザイヤー」を受賞した日産「サクラ」。三菱自動車の「eKクロスEV」も同賞

 マルチソリューションとは、可能性のあるあらゆる技術を組み合わせて、リスクを分散させつつ、未来を切り開いていくことを意味している。

 「EVにすれば全て解決」のような簡単なやり方で、問題が解消するのであれば、誰も苦労していないし、それこそとっくに世の中の全てのクルマがEVに置き換わっているはずだ。

 そういう視野狭窄に陥らずに、さまざまな技術を開発している日本の自動車産業をどの口が「オワコン」などと言うのか神経を疑うところだ。

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