世界の半導体技術レベルと比較して10〜20年以上の周回遅れとなっていた日本。
政府は、経済産業省が中心となり欧米との国際連携を軸に次世代半導体の量産する新会社「ラピダス」と、研究開発拠点である技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)をセットにした半導体産業の復活を掲げる基本戦略構想を打ち出した。このプロジェクトを実現するため5兆円の資金を用意し、「最後のチャンス」に挑もうとしている。
経産省とトヨタ自動車、NTTなど主要企業を巻き込んだ「オールジャパン」によるこの構想。なぜこのタイミングで生まれたのかを、英調査会社オムディアの杉山和弘コンサルティングディレクターに聞いた。
経済安全保障の観点から旗振り役をするのは自民党半導体戦略推進議員連盟の甘利明会長だ。甘利会長は、2021年12月に開いた会合で「半導体の開発のためには今後10年間で7〜10兆円必要」と発言したのが、半導体産業復活に向けての動きの始まりだった。同議連は22年5月には「今後10年で官民あわせて10兆円規模の追加投資を行うべきである」と決議するなど、強力に後押しをしてきている。
こうした動きを受けて、5月時点で経産相だった萩生田光一・自民党政調会長がレイモンド米商務長官と「半導体協力基本原則」に合意。同月23日に開催された日米首脳会談で次世代半導体開発の共同タスクフォースの設置を発表した。
7月29日の日米経済政策協議委員会(経済版「2+2」)では、重要・新興技術の育成・保護に向けて日米共同研究開発の推進で合意。日本側の取り組みとして研究開発組織(日本版NSTC)の立ち上げを発表した。
このための予算措置として21年度補正予算で7800億円を計上した。思い切った投資をしようとしている。
これだけ矢継ぎ早に半導体関連の政策を打ち出した背景には、「産業のコメ」といわれる半導体分野での日本の立ち遅れがある。欧米と比較して周回遅れの状態になっているのだ。
1988年に日系半導体シェアは50%を越えた。だが、その後30年以上にわたり低下傾向が続き、2021年のシェアは8.8%しかない。半導体企業のベスト20社を見ると、1990年には1位のNEC、2位の東芝をはじめ日立、富士通など10社が入っていた。しかし2021年で見ると、12位のキオクシアが最高位で、ルネサス、ソニーセミコンダクターの3社しかない。
こうした惨状からして、このままでは日本から半導体産業は消滅してしまうという危機感も生まれていた。
後述するように米国をはじめ欧州、韓国などでは、次世代の半導体開発のために政府が強力な支援策を相次いで発表した。日本はこの流れに乗り遅れるわけにはいかない情勢に追い込まれている。
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