ちょっと脱線するが、高齢化の進む日本においては、百貨店が狙う中高年市場は拡大しているはずではないか? ということを、しばしば問われるので、説明をしたい。中高齢人口が増加していることと、百貨店ファンの数とはほとんど関係がない。
百貨店ファンの中高年女性とは、若いころに百貨店を利用していた世代(主には団塊世代というのがイメージに近い)が、時代を経て中高年になっているということであり、当たり前だが歳を取れば百貨店を利用するようになるということでは決してない。
今の50代は昭和40年代生まれぐらいだが、その世代でも、もう百貨店を普段使いしている人は多くない。彼らより下の世代が取り込めなかったことにより、昔からのファン層が百貨店と一緒に歳をとり、そして徐々に買い物の主役から退場しつつある。
図表1は50歳以上人口の推移と2000年時点で50歳以上だった人の人口の推移だ。当たり前だが、新しい世代を取り込まなければ、高齢化とは関係なく顧客層が急速に減少することが示されている。大衆ファミリー層を失った百貨店は、成り行きに任せれば、右肩下がりから抜け出せないのである。
1990年代以降、大衆ファミリー層のニーズは分散した。家族の休日を過ごす場所としては、専門店チェーンの集積であるショッピングセンターが、駅ターミナルや郊外に出現したことで、百貨店はその受け皿ではなくなった。
特に広い空きスペースがある地方や郊外においては、広大な駐車場を備えた低層階のショッピングモールが多数できたことによって、百貨店が立地する中心市街地という街のターミナル機能自体が低下した。
百貨店は大型店舗を地域の人流の中心に立地させることで、広域の商圏から広く集客して初めて成立する商売である。そのため、立地する中心市街地自体がクルマ社会化の下で衰退している地方においては、街と共に弱っていくしかない。
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