これからも存在し続ける百貨店には、DXという技術革新を取り込んで、自社が選択した顧客層との新たな関係を構築することが求められるのではないだろうか。
百貨店が外商部というチームを抱えて、お得意さまを個別にフォローしているという話を聞いたことがあるだろう。その詳細については、ほとんど開示されないので、あまり目には触れないが、富裕層向けコンシェルジュ集団と言ってもいいだろう。
外商は、顧客のさまざまな情報を集め、趣味趣向を踏まえてニーズを先取りして、多角的な提案を行っていくことで、収益機会を極大化するためのプロ集団である。
この外商機能が、実はDXとの相性がとてもいいことをご存じだろうか。DX化とは、コンシューマービジネスにおいては、個人のIDを通じてさまざまな購買履歴や行動履歴を収集し、データとして蓄積することで、顧客ニーズを把握できるようになることを意味する。
百貨店の外商は、DXと相性がいい(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)
これこそ、外商のノウハウを可視化し、拡張できる技術革新であり、うまく使えば、トップ外商マンの「技」を組織で共有することも可能になる。
自社の設定した顧客層に対して、DXを活用したコンシェルジュ機能の強化を進めていけば、百貨店はこれまでにはない収益機会を開拓していくことができるのだ。DXをどのように位置付けているかによって、これからの百貨店の行く末は大きく変わってくるはずなのである。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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