池袋から西武がなくなる──変わりゆく街と客層、百貨店が消える本当のワケ小売・流通アナリストの視点(3/4 ページ)

» 2022年12月26日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

減り続ける運命の百貨店

 図表2は東京、横浜、大阪、京都、神戸の特別区、政令都市の百貨店売り上げとそれ以外を地方としてその売り上げ推移を時系列に示したものである。2大都市圏に比べて、地方百貨店の減収傾向がひどいことが分かる。

図表2:経済産業省「商業動態統計」より筆者作成

 2010年以降コロナ前までに注目すると、大都市圏では減収から増収へと巻き返していたことも見て取れる。これが訪日外国人のインバウンド需要であり、この追い風によって大都市百貨店は一息つくことができた。

 この間にも地方では百貨店の閉店が続いており、政令都市以外では百貨店が残る場所がどんどん減ってきた。しかし、コロナ禍の襲来により、この恩恵が消失した大都市百貨店も地方百貨店と同水準にまで落ち込んでしまった。そんな中、大都市ターミナル型百貨店の再開発、建て替えが一斉に進められている。

図表2の拡大図

 これまでもJフロントリテイリングでは、大丸札幌店、心斎橋大丸のテナント化による収益改善や、銀座店をGINZA SIXに転換し、ショッピングセンター化するという動きを進めてきた。百貨店としての売場を縮小、もしくは転換し、事業構造を大きく変えて収益改善をはかろうとする動きだが、多くの百貨店で同様の動きが目立つようになってきた。

 東急百貨店は渋谷駅再開発に伴って東急東横店を閉鎖したが、その跡地に百貨店が再建されることはなく、複合商業施設、渋谷スクランブルスクエアとなる。東急百貨店本店も再開発により閉店が決まっている。その後、再構築されるかどうかは明らかではないが、百貨店として構成する可能性は低いとされる。

 さらには、新宿駅西口の小田急百貨店も再開発により、大幅に減床し事実上アパレル売場がなくなった。ここでも、再開発後に出店するかどうかは明らかになっていないが、大方の予想では複合商業施設となるのではとのうわさがある。ついに、東京のターミナルエリアでさえ、百貨店が閉店する時代に入ったのである。

 こうした話は「ついに百貨店がなくなってしまう!」ということを言っている訳ではない。ただ、古くからのオールドファン、富裕層、そしてインバウンド、などの特定の需要を取り込む業態へと変わったのだから、それに合わせて必要とされる店舗の数も減る、ということになる。

 三越伊勢丹ホールディングスは2023年3月期で過去最高売り上げとなる予想を発表しているし、阪神阪急百貨店も過去最高の外商売り上げを記録している。高島屋、Jフロントリテイリングもその存在感は揺るぎない。ただ、百貨店が立地するターミナルの人流に甘んじて、自社顧客層の見極めをすることなく、漫然と売場を展開し続けるなら、オールドファンの退場と共に自らも退場せざるを得ない

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