2月末に始まったウクライナ戦争以降、石油などエネルギー価格の上昇から国内外の主要国がエネルギー政策の見直しを迫られている。2015年9月に国連が2030年までの国際開発目標「SDGs」(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)を採択し、エネルギーに関連した目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の下、各国が再生可能エネルギーの拡大などクリーンエネルギーへのシフトを進めていた中で、ウクライナ戦争によって歴史の転換点を迎えようとしている。
日本も例外ではなく、ひっ迫するエネルギー需要を背景に、政府は7月、原発再稼働を本格化する方針を表明。東日本大震災での事故以来、“自粛ムード”にあった原子力発電が再び存在感を強めている。
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戦争とエネルギーに翻弄された激動の2022年が終わろうとする中、本稿では、ロシア産エネルギー資源の輸入抑制に伴う欧州各国及び日本の影響を示すとともに、日本のエネルギー安全保障と長期安定電源化の現状と課題について考察した。
ロシアによるウクライナ侵攻により、原油価格の代表的な指標「WTI」(West Texas Intermediate)の先物価格は、1バレル120ドルを超える記録的な水準に跳ね上がった。その後、中国の石油需要減少の報道で、1バレル95ドル前後まで下がったが、再び上昇し、高値のまま、乱高下している。
天然ガスは、さらに激しく高騰。原油価格とほぼ同時に、欧州のガス価格も最高値を記録し、原油換算で1バレル400ドルを超える異常な高値をつけた。4月7日には、先進7カ国(G7)がロシア産石炭の輸入禁止・段階的廃止を発表し、石炭価格も急上昇している。
NHKの4月25日付けの記事によると、ロシア産のエネルギー資源は、特に原油の輸出で世界の11%、天然ガスは25%、石炭は18%と、世界市場で大きなシェアを占めている。ドイツやイタリアをはじめとする欧州諸国は、ロシアへの天然ガスの依存度が非常に高く、今後、天然ガスの確保が困難になる事態も懸念されるという。
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