経済産業省の関連団体JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)のレポートによれば、ロシア産天然ガスは世界第1位の輸出量を占め、主な輸出ルートは、(1)LNG(液化天然ガス)輸出(西回り、スエズ運河経由)、(2)LNG輸出(東回り、北極海航路経由)、(3)サハリンLNG輸出、(4)パイプラインガス輸出の計4ルートがある。
(1)〜(3)はLNG(液化天然ガス)、(4)は天然ガスで、LNG100万トンを天然ガス1.4BCM(1BCM=10億立法メートル)として換算すると、20年の輸出量は、(1)〜(3)合計で42.4BCMに対して、(4)は203BCMで圧倒的に大きい。
国別の輸入量の上位3カ国は、ドイツ38.1BCM(ルート4)、フランス18.8BCM(ルート1、4)、イタリア20.5BCM(ルート4)だ。これら3ヵ国では、ロシア産天然ガスの輸入割合が近年、増加傾向にあり、20年はドイツが43%、フランスが27%、イタリアが31%と極めて高い。
これに対し、日本の輸入量はルート3から8.9BCMで、ロシアからの輸入割合は9%と小さい。
EU(欧州連合)では、これまで急進的な脱炭素政策のもとで、二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力を縮小させた結果、ガス火力への依存度が増大。特にロシア産天然ガスに大きく依存してきた。
これに伴い、EU各国は風力発電を大量に導入した。発電量が不足した際には起動が容易なガス火力でバックアップする方策を取ってきたが、ウクライナ戦争で天然ガス価格が高騰する中で、石炭火力と原子力が最大限利用される傾向にあり、光熱費高騰要因の再生可能エネルギー(以下、再エネ)などの脱炭素政策に急ブレーキがかかる状況となっている。
日本経済新聞は6月3日付けの記事で、世界の石炭火力発電量は、天然ガスの価格高騰で既に21年に前年比9%増、過去最大の10兆422億kWhに達していると報道。国別では、中国が5兆3832億kWh(前年比9%増)、インドが1兆2504億kWh(同11%増)でいずれも過去最高、米国が8986億kWh(同16%増)、ドイツが1653億kWh(同24%増)、日本が2966億kWh(同3%増)となり、ウクライナ戦争でCO2排出量の多い石炭火力の需要が今後もさらに増えると予想している。
ドイツ、フランス、イタリアの3カ国では、ロシア依存からの脱却を図る取り組みを進めている。電源構成でのガス火力割合が15%のドイツは、エネルギー関連法を改正する包括法案を閣議決定するとともに、国内初のLNG輸入ターミナルを2カ所建設。30年の再エネ割合を65%から80%に引き上げる計画を立てた一方、22年脱原発の方針を見直し、残る3カ所のうち2ヵ所を23年4月まで稼働継続とした。
ガス火力割合が5%と少ないフランスは、「経済レジリエンス計画」を発表し、ロシア産石油・天然ガスからの依存脱却(27年)を目指して、化石燃料の消費削減、LNGの調達の多角化、バイオガスの生産増加等、再エネを拡大する方針を示した。これに加え、原発6基の新設、今後8基新設の検討も進める。
ガス火力割合が45%と多いイタリアは、既設のLNG輸入ターミナル2ヵ所をフル活用し、アルジェリア、コンゴ、カタール、リビア、アゼルバイジャン、ノルウェーからの輸入代替で、23年にはロシア産天然ガスからの依存脱却を実現する計画を示している。
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