ヨドバシ進出でこれまでの苦労が水の泡!? 豊島区長の反対表明、その切実な背景とは長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/7 ページ)

» 2022年12月28日 06時45分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

背景にある危機感

 高野区長がまちづくりに本腰を入れてきたのは、2014年に豊島区が東京都23区から唯一、日本創生会議がまとめた「消滅可能性都市」に選ばれてからだ。

 消滅可能性都市は全国の896自治体(市、区、町、村)がリストアップされているが、ほとんどがいわゆる過疎地である。

 消滅可能性都市とは、「2010年から40年にかけて、20〜39歳の若年女性人口が5割以下に減少すると予想される自治体」のことだ。全国1799自治体のうち、約半数に上った。

 大都市、特に東京への人口集中によって消滅可能性都市が生まれるのだが、その東京の中にあって、豊島区は消滅可能性都市に認定されてしまった。

 豊島区では、この不名誉を挽回するために「国際アートカルチャー都市」を構想。20〜39歳の若年女性人口を増やすことに注力してきた。

 だからこそ、まちづくりの要となる池袋西武に女性の憧れの的である、海外高級ブランドが必要なのだ。池袋からは、21年8月に西口のマルイが閉店して、そうでなくてもファッション面が弱くなっている。

池袋西武1階に入居するグッチ
池袋西武1階に入居するルイ・ヴィトン

 「西武などなくなっても何も困らない。ヨドバシ出店後の街の新しい変化を見てみたい。変化を恐れるな」という主張は、いかにも前向きに見える。しかし、池袋は今の秋葉原のようなエリアになる可能性が高い。

 秋葉原の電気街を歩いていると、確かにZ世代の若い女性はたくさんいる。ただし、メイドなどの萌(も)え衣装の店服を着た、コンセプトカフェやリフレの従業員が目立つ。どちらかというと、男性や外国人観光客が多い印象だ。

 それは、消滅可能性都市に逆戻りする軌道にも見える。消滅可能性都市を脱却しようと、若年女性を呼び込むために整備してきた資金には、もちろん区民の血税が使われている。

豊島区はアートの力で街を変えようとしている

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