寿司の新トレンド "回らない"けど高級すぎず レトロで新しい「カタカナスシ」とは「町の寿司屋」を現代風にアップデート(2/3 ページ)

» 2022年12月29日 08時00分 公開
[山路力也ITmedia]

 スパイスワークスにおけるカタカナスシの発想は、10年に恵比寿に開業した「肉寿司」にまでさかのぼる。寿司という文化を再構築する上で、魚ではなく肉を使った寿司を考案し、従来の概念にとらわれない新たな寿司の表現が次々と生み出されていった。その延長線上にあるのがカタカナスシの商品たちだ。

 とはいえ、新奇性だけではなく、まず寿司としておいしく成立していることが大前提。外国人が作る「カリフォルニアロール」のような「SUSHI」ではなく、日本人が作るからこそ、カタカナスシでは江戸前寿司の基本である酢飯とタネ、海苔などはしっかりと伝統を守る。その上で新しい組み合わせや調理方法によって新たな寿司の可能性に挑み、新たな寿司文化を創出させようという思いがカタカナスシの根底にある。

「ほぼ上野 オスシマチ」の店舗外観。カタカナスシの特徴の一つであるネオンサインが目に入る(撮影:筆者)

 例えば12月にオープンしたばかりの「ほぼ上野 オスシマチ」(東京都台東区)では、マグロ仲卸からその日に入った生本マグロのみをふんだんに使用している。カンパチも鹿児島小浜水産による極上物を使う。厳選したトロやサーモン、カンパチなどをマンゴーのようにカットした握りでは、炙ったトロの下にしょうゆ漬けの卵黄を挟み、サーモンにはイクラを乗せてシャリとの間にクリームチーズを挟むなど、今までの寿司にはない新たな味わいも表現した。さらにマグロのユッケはアイスクリームのコーンの上に乗せるなど、SNSを意識したビジュアルも特徴だ。

SNSを意識したメニューもあるが、第一に重視しているのは「味」だという(提供:ほぼ上野 オスシマチ)

 「見た目だけにならないように、まずは食べて味がおいしいことを第一に考えて、次にビジュアルを大事にしています。当社(スパイスワークス)では、お客さまが咀嚼する回数や、口の中で全部合わさった際の味の階層まで計算して商品を考えています。寿司の歴史を深堀りして、理解を深めた上で考案しているため、外国人にはマネのできないような、日本ならではの料理を創出できていると考えています。今後は海外で独自に発達した『SUSHI』ではない、日本人が創った『寿司』を世界で提供していきたいという狙いもあります」(下遠野氏)

大阪にもカタカナスシの波

 22年4月、大阪お初天神にオープンした「鮨割烹 のの」も、注目を集めている寿司居酒屋の一つだ。

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