攻める総務

リアルとバーチャル共存のすすめ 単なる「出社回帰」が最も愚かな選択である理由働き方の見取り図(2/5 ページ)

» 2023年01月10日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 まず、新型コロナウイルスが一気に世界中に広がってしまった背景について確認しておきます。2019年12月に中国・武漢で最初の感染が報告されてから世界中で感染者が現れるまで、あっという間の出来事でした。それは、国を越えて人が頻繁に往来するグローバル社会の宿命だったといえます。

 成田空港が公表する「空港の運用状況」によると、コロナ禍前の同空港の国際線発着回数は、年間20万回を超える規模です。また、身近にある電化製品の中をのぞいてみると、使われているパーツは世界の各地で生産されています。それらの事実は、世界の営みが国境で切り離されることなくつながっていることを示すものです。

コロナ禍でも社会機能を維持できた理由

 新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で人々は外出禁止を余儀なくされ、感染におびえる日々を過ごすことになりました。新種のウイルス一つで“世界中の日常”が突如奪われてしまうというあまりにも苦い経験は、コロナ禍がもたらした重要な教訓です。

 しかし、それでも社会が営みを完全に停止させずに済んだのには、大きく2つの理由があります。1つは、医療関係者や日用品販売などに携わるエッセンシャルワーカーの人々が感染のリスクを冒して出勤してくれたことです。

画像はイメージ

 そしてもう一つは、多くの会社がテレワークへと移行し、出社人数を最小限に留めながら業務を継続させたことです。それを可能にしたのは、インターネットの発達でした。

 チャットやEメール、ビデオ会議システムなどを使えば、職場に出社してその場にあるリアル(real:実在)のビジネス素材を用いずとも業務の意思疎通やファイルのやり取りなどが可能です。インターネットはテレワークで、パソコンに映し出された文字や映像、音声などバーチャル(virtual:仮想)のビジネス素材を用いて業務遂行できる環境をもたらしました。もし、インターネット環境が整う前にコロナ禍が発生していたとしたら、世界はもっと深刻なダメージを受けていたはずです。

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