こうした過渡期にあるいま、職場ではまず、ペーパーレスなどを推進してビジネス資材を可能な限り、リアルからバーチャルへと移行させ、テレワークで対応可能な業務範囲の最大化に取り組む必要があります。また、いまエッセンシャルワーカーが支えている業務についても、ロボットなどで遠隔操作できるようにする技術開発を進めていかなければなりません。
冒頭でも触れたメタバースも、リアルとバーチャルを自由に切り替えられる社会を構築する手段の一つです。現状は普及は限定的で、博報堂が22年11月に発表した「メタバース生活者意識調査」では、メタバースのサービス利用者は8.3%どまり。メタバース利用者が多い項目は「ゲームの体験」で7割を超えている一方、「ビジネス商談」は4割ほど。ビジネスシーンで浸透するのは、まだこれからのようです。
とはいえ、メタバースがビジネスシーンにもたらすメリットは多々あります。プレイトゥアーン(Play to Earn)と呼ばれるゲームで遊んで稼ぐ仕組みなどがすでに知られてはいますが、今後の職場環境に与える影響という視点から3つ挙げます。
まず1つ目は、メタバースの中にいる人へのサービス提供です。メタバースにいる間、その人の意識やあらゆる知覚は仮想世界に没入しています。そのため、メタバースにいる人が何かを買いたいと思った時、メタバースの中に店舗があればビジネス機会が生まれます。
逆に、現実世界の方にどれだけ立派な店舗を構えていたとしても、メタバースの中にいる間は気付いてくれません。今後メタバースの中にいる人が増えて、滞在時間が長くなるほど、メタバース内に職場を設置することで得られるビジネスチャンスも大きくなり、メタバース内で提供できる仕事の数も増えていくと期待できます。
2つ目としては、メタバース内の自分の姿は分身(アバター)として存在するため、人種や性別、年齢、容姿、障がいなどの判別ができなくなります。これは、ダイバーシティ&インクルージョンの観点において重要な意味を持ちます。メタバースに設置された職場では、現実世界だと不当な差別につながることがある要素がリセットされ、公平性の高い就業環境が提供されるようになる期待があります。
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