多くの職場ではビデオ会議システムが使われ、出社している社員とテレワークの社員が混在した状態で会議が進められる様子は珍しくなくなりました。セミナーもオンラインで開催されるほか、リアル会場とオンラインどちらでも参加できるようになっているものが多くなっています。
また、テレビの情報番組などではコメンテーターが、スタジオ(リアル)と映像(バーチャル)とで混在して出演する姿も見慣れた風景となりました。昨年末に放送された明石家さんまさん司会のバラエティー番組「ご長寿グランプリ」では、高齢者がオンラインで早押しクイズに参加していたほか、紅白歌合戦ではアニメ「ONE PIECE」に登場するウタが3D-CGモデルで出演し、歌唱を担当するAdoさんは姿を見せないまま、ウタとして大ヒット曲『新時代』を披露しました。
これらの事例は、リアルとバーチャルが共存する社会が成立しつつあることを示しています。「職場なのだから、みんなが同じ場所に集まるのが当然だ」「高齢者にはオンラインなんてムリに決まっている」「本人が出てきて歌わないなんて歌手じゃない」といった考え方や価値観は、徐々に説得力を失いつつあります。
ただ、決してリアルの場が不要になりつつある訳ではありません。コロナ禍で外出禁止や密の回避などを強いられた反動で、リアルの価値も再認識されています。いま社会の姿は、リアルかバーチャルどちらか一択ではなく、リアルとバーチャルをいかようにも組み合わせて選択できる方向へ移行する過渡期にあるということです。
この組み合わせの広がりは、働き方においてもかつてとは比べられないほど選択肢を増加させます。柔軟な働き方を求める人はもちろん、ケガや病気、重度の障害などによって働くチャンスに恵まれなかった人にも、新たな可能性をもたらします。
さらに、社会機能がサステナブルになる効果も期待できます。世界の日常がウイルス一つで奪われてしまったという事実は、現実世界(リアル)において露呈した弱点であり、今後も発生しうるリスクです。
仮想世界(バーチャル)においても未知のコンピューターウイルスにさらされる点で弱点はありますが、リアルとバーチャルを自由に切り替える仕組みが構築できていれば、どちらかの世界でウイルスが蔓延したとしても、社会の営みを持続させられる確率が高まります。
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