マーケティング・シンカ論

「CX戦略」でNGなことはなにか デジタル化の前に整理すべきポイント自分の頭で考える(2/5 ページ)

» 2023年01月19日 08時00分 公開
[小田志門ITmedia]

(2)生産性だけを重視したデジタル施策の「落とし穴」

 CX戦略にデジタルツールを組み込む際には、必ず投資対効果(ROI)の話になります。その効果の設定として「どれだけコストを削減できるのか?」は割けて通れない論点です。

 最初に申し上げておくと、デジタルツールでコスト削減を求めることが間違いなのではありません。むしろ、コスト削減さえも実現できない企業が多い中で、そこに到達できたとするならば、それは非常に喜ばしいことです。

 では、どこに問題が発生するのか? 「デジタルツールによる企業の効率化が、顧客にとっての苦痛」になっているケースです。お恥ずかしながら、弊社も幾度となくこの壁にぶち当たってきました。このケースでは、「サービスリカバリー」というキーワードが重要になります。

 NPO法人顧客ロイヤリティ協会が発表したデータで、「苦情を申し立てた顧客に適切な課題解決を提供した場合、リピーターになる確率が高い」ことが示されたものがあります。この不満を解消するための施策の総称を「サービスリカバリー」といいます。つまり、サービスリカバリー体験(=不満解消体験ができた)の母数が、大きくなればなるほど、企業にとって売り上げや利益・LTV(顧客生涯価値)に貢献するチャンスが広がるというわけです。

不満を解決すると、再購入率が高くなる
顧客の多くは問い合わせをしない

 顧客の多くは、不満を抱いても企業に苦情を申し出るケースは非常に少数です。このサービスリカバリーに対する解像度が低いまま、無邪気にコスト削減だけ追い求めると「不満解消体験の提供の低下」を招き、ひいては売り上げ・利益などの重要な指標にも悪影響を与えていた、ということになりかねません。

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