ダイソーのような企業は元来「ヒャッキン(「100円均一」の略)」と呼ばれて消費者の支持を集めていた。それがいつしか「100円ショップ」という表記に代わり、今では100円以外の製品も数多く取りそろえるようになってきた。
日本国内では、ダイソーのような100円ショップのブランドとして、セリアやキャンドゥなど、さまざまなチェーンが存在する。これは海外においても同様で、例えば米国では「ドルストア」、イギリスでは「ポンドランド」のように、それぞれ1ドル・1ポンドといった価格で商品が買える店舗が存在する。
しかし、日本よりも激しいインフレに苦しむ海外においては、このような100円ショップに近い価格均一モデルはすでに破綻しかかっている。ドルストアでは、インフレに対応して標準的な価格帯を「1ドル」から「1.25ドル」に値上げしており、ポンドランドも同様に標準的な価格帯を「1.25〜1.5ポンド」に値上げするようになった。
この流れをくめば、足元で物価高がはじまってきた日本の100円ショップビジネスに起き始めている変化も理解しやすい。
ダイソーを展開する大創産業は、22年に創業から50周年を迎えた。低コストな商品を販売するために、原材料や生産費などを削減し、値下げをすることで競争力を高め、店舗内にはさまざまなカテゴリーの商品を展開し、顧客が欲しい商品を見つけやすくする戦略が同社における長期の繁栄をもたらしてきた。一般的な企業で見られる広告へのコスト投下の代わりに、安価でも品質の保証された商品が水面化で拡散することを通じて、顧客に商品やブランドが波及した。
そんなダイソーが最近展開しているのが、「THREEPPY」や「Standard Products」という、300円を標準的な価格帯としたショップだ。「大人カワイイ雑貨」や「ちょっといいのが、ずっといい。」といったテーマの下、100円ショップよりも高い価格帯で勝負している。
同社の22年度における出店予定を確認すると、100円ショップのダイソーが国内で約200店舗出店するのに対し、上記の300円ショップは合計で約150店舗を出店する予定(22年3月時点)となっていた。新規出店のうち、40%以上が「300円」の価格帯で勝負する店舗ということになる。
この点から推測すると、米国のドルショップが一律値上げしたように、100円から「110円」あるいは「125円」均一とするのではなく、高価格の業態を分けることで「100円ショップ」というブランドを維持し、回転寿司チェーンの値上げで見られたような消費者の離散を防ぐ狙いがあるのではないか。
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