レトロ趣味? 貧困? 話題の「風呂なし物件」に若者たちが注目し始めた、本当の理由古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2023年01月27日 05時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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 一般的な浴槽を200リットルとして、毎日入浴した場合は水道光熱費で3000〜4000円程度かかる。では、毎日の入浴を銭湯とした場合の料金相場はいくらか。東京都浴場組合に加盟する事業者で利用可能な10枚つづり4500円の共通入浴券を利用すると仮定すると、1カ月当たりの入浴料金は1万3500円になる。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

 単純な水道光熱費との比較では、毎日銭湯に入る方が1万円ほどのマイナスとなるが、忘れてはならないのが家賃の軽減効果である。

 一般的に、風呂なし物件は風呂付き物件よりも家賃が安くなる傾向がある。例えば、都内の1K(1部屋・キッチン・ユニットバス)であれば、風呂ありで6万〜7万円台の家賃相場が、風呂なしでは3万円台で借りられる場合もあるようだ。

 風呂なしによる家賃の軽減効果が月3万円程度とすると、風呂なし物件に住むことで、本来の出費が月2万円ほど浮く計算になる。都内の銭湯の多くはシャンプーやボディーソープのようなアイテムも備え付けられているだけでなく、広々とした湯船などを楽しむことができ、余ったお金を趣味や勉強、グルメといった他の用途に充てられるようになるのだ。

 一方で、2人以上の世帯の場合は、広い家に住む必要があるため、家賃に占める浴室の割合が縮小し、先述した軽減効果が薄くなる。それだけでなく、銭湯の利用料金が単純に2倍以上になるため、風呂なしは割に合わない結果となりそうだ。

 「外風呂から内風呂へ」の動きは、複数人世帯を前提としたものである。世帯人数が多いほど内風呂のコスパが高まることから、昭和から平成にかけて内風呂が浸透してきたのは当然だろう。しかし、世帯人数が1人となると、銭湯の方がコスパが良いという見方もできる。プライバシーや衛生面の価値観次第ではあるが、「コスパ重視」と称される若年層において、今後内風呂から外風呂へと回帰する動きが強まるかもしれない。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


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