昨年末はワールドカップが盛り上がりを見せました。試合内容もさることながら、全試合無料生中継を実施したサイバーエージェントの「ABEMA」にも注目が集まりました。
地上波の放送局が放映権料の高騰を受けて購入が進まない中で、放映権を獲得し全試合無料中継を実現したものでした。放映権料を広告収入で回収しきれなくなったテレビと、ABEMAのユーザー増を狙い広告費代わりに放映権を購入できたサイバーエージェント。多くの人が、動画配信のビジネスモデルの変化を実感したことでしょう。
決算書から企業を読み解く本連載ですが、今月は4回にわたって動画配信やテレビ、放送業界について取り上げていきます。今回は、日本テレビホールディングスです。減収減益で制作費の削減やむなしの苦しい状況ですが、「TVer」「hulu」などのネット視聴の取り組みは、打開のカギになりうるのでしょうか。
日本テレビは、地上波テレビ局の中でも視聴率トップの企業です。全日、プライム、ゴールデンという主要な時間帯の視聴率では12年連続の3冠を獲得しています。さらに同社がコアターゲットと呼んでいる、13〜49歳の比較的若い層の視聴率も10年連続トップです。
まずはここ数年間の業績の推移を見ていきます。
売上高はコロナの影響が出始めた2021年3月期に悪化。22年3月期も、コロナ禍前の水準には及んでいません。
一方で利益面は、21年3月期には大きく悪化したものの、22年3月期にはコロナ禍前を大きく上回っています。
利益に関しては、12年10月のHD化以降に過去最高の水準に到達。22年3月期は利益面に関しては非常に好調でした。
売り上げは減少しつつも利益面は好調だった理由は、番組制作費の減少です。コロナ禍前は952億円ほどあった番組制作費は、100億円以上も減少し845億円にまで落ち込んでいます。伸び悩みを見せるテレビ局では、番組制作費を抑制し収益性の改善を進めていたのです。
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