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【4月施行】60時間超の時間外労働、割増賃金引き上げ 自社は該当する中小企業か?令和5年の法改正トリセツ(2/3 ページ)

» 2023年02月01日 08時30分 公開
[佐藤敦規ITmedia]

改正の狙いは「残業時間の削減」

 働き方改革の中心に据えられている残業時間の削減は、過労死や精神疾患などの問題を引き起こす長時間労働の是正を目的としています。しかしパートタイマーなど短時間労働者の占める割合が増えたことにより、年間の平均労働時間こそ減っているものの、依然として諸外国に比べ長時間労働者が多い傾向があります。

 厚生労働省の「令和4年版 過労死等防止対策白書」によると、週労働時間が49時間以上の日本人労働者の割合は15.1%(男性21.7%、女性6.9%)でした。この数字は先進国の中で韓国の次に多く、男性では5人に1人が超えているという結果となっています。

諸外国における「週労働時間が 49 時間以上の者」の割合(画像:厚生労働省「令和3年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」より)

 なぜ残業時間が減らないのでしょうか? その要因として、日本はEU諸国に比べて残業時間に対する割増賃金が低いことが指摘されています。EU諸国では時間外労働の割増賃金率が50%に設定されているため、残業が経営利益を圧迫します。その結果、できるだけ従業員に残業をさせないマネジメント力が管理職に求められるのです。

 一方、日本では25%とそれほど高くありません。社員を増やすより、残業させたほうが経営的には安く上がります。時間外労働が60時間を超えた場合の割増賃金率が欧州諸国並みになれば、長時間労働を減らす方向に使用者側が努力するであろうという思惑から導入された制度です。

 では、今回の改正で企業の負担はどれくらい増えるのか算出してみましょう。時給換算で1500円の社員が70時間残業したと仮定します。すると、1カ月あたりの残業代は、( (1500×1.25)×60)+((1500×1.5)×10)−(1500×1.25×70)=3750円アップします。

 一人でしたら影響は少ないでしょうが、該当者が3人以上いれば、1万円を超えるので無視できなくなります。社会保険料の等級が上がった場合など他の要因も考慮すると、企業側の負担はさらに増えます。

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