そう考えると現在の最適解は、やはりハイブリッド車ということになる。それを理解できない人たちにも、ハイブリッド車の魅力を広めるためにつくられたのが、新型のトヨタ・プリウスなのである。
ハイブリッド車は充電できないことを欠点のように見る人もいるが、普通充電さえままならない日本のマイカー事情では、BEVはそれほど普及できない環境にある。急速充電こそBEVの理想的な使い方だと思っている人もいるようだが、BEVの電費を走行時の電力消費だけで考えるのは、そろそろ改めたほうがいい。
充電中の充電ケーブルやバッテリーの熱損失を考慮していない、というのは電力消費を考えるにあたって不十分ではないだろうか。ましてやバッテリーは冷却する必要があればそのぶん電力を消費するし、これからますます大電流化される急速充電では充電ケーブルさえ冷却する必要性が出てくるのだ。
BEVとFCV、PHEVとシリーズハイブリッドを含むハイブリッド車、さらに水素エンジン車やバイオ燃料、合成燃料を使うエンジン車のすべてが使い分けられてこそ、適材適所の脱炭素対策になるのである。
またカーボンニュートラルを実現するためには、さまざまな手段を講ずることも大事だ。つまり排出を抑えるだけではなく、回収し利用することも推し進めることだ。このあたりも日本では技術開発が進んでいるので、筆者は十分に期待できると思っている。
それに地球温暖化だけでなく環境問題すべてを考えることが必要だ。EVやソーラーパネルがCO2を削減しても、リチウムやシリコンの採掘が公害問題となっては矛盾する。
タイヤやブレーキが摩耗することで発生するダストも、いよいよ環境負荷に含まれるようになってきた。クルマを取り巻く環境が厳しくなっていくほど、日本の技術力、開発力が問われ、解決策を示せれば国際的な注目度は高まる。これからの10年が正念場だ。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。
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