楽天モバイル、無料プランを廃止しても「赤字拡大」のワケ妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(5/8 ページ)

» 2023年02月17日 15時00分 公開
[妄想する決算ITmedia]

黒字化するにはあと「300万契約」?

 ちなみに、どの程度の回線を獲得すれば黒字化できるのかというと、前提が大きく変わっているため参考程度にしかなりませんが、サービス開始時の損益分岐点は月額2980円で700万契約だとしていました。現在の契約数は506万なので194万ほど足りません。

 さらに料金プランも参入時の20G一律の2980円から変わり、現在の単価は2510円です。そのうち、通信料はざっくり2400円ほどと仮定すると、当初の損益分岐点の売り上げには840万契約ほどが必要になります。

 つまり、かなり大まかな推算にはなりますが、300万契約以上の上積みが必要になると考えられます。

 本来であれば、無料プランを継続しさらに顧客を獲得してから無料プランの廃止としたかったのでしょうが、契約が伸び悩み大きな赤字が続く中では収益性の改善を優先するしかなかったのかもしれません。

 無料プランがあるうちに十分に契約数を取り切れず、契約数は減少が続いている現状を考えると、黒字化のハードルは上がっています。

 大きな赤字を垂れ流す楽天モバイルを抱える中、楽天の財務状況はどうなっているのか見ていきましょう。

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 まず資産の状況を見てみると、現預金は4兆6943億円とものすごいキャッシュを持っています。

 一方で負債を見てみると、日常的に支払いが必要になる仕入れ債務は4505億円ほど。社債や借り入れは1兆7607億円ほどあります。

 社債は借り入れはすぐに支払いの必要なものばかりではなく、長期的なものが多いため、財務状況には非常に余力があるように見えます。

 しかしながら、楽天は楽天銀行や楽天証券などを抱えており、これらの現預金の大半はこうした金融事業によるものです。特に銀行の顧客からの預金の影響は大きく、その資金はもちろん別で管理されており、当然ながら自由に使える資金ではありません。楽天銀行に預金したら勝手にモバイルの投資に使われていて「引き出しできません」などということが起きたら大問題です。

 このため、楽天の財務状況を見ていく際には金融事業の影響を除いて考える必要があります。

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 金融事業が保有しているキャッシュの額は、楽天銀行が3兆7418億円、カードが5164億円、証券が3089億円、生命が36億円、損保が382億円。計4兆6089億円にもなります。全体の現預金からこれらを除くと、手元の現預金は854億円となります。

 多額の赤字が続く楽天にとっては、かなり現預金の状況は心もとないです。

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 実際に楽天グループ単体の現預金は926億円で、モバイルはほぼ現金を持っていません。

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 キャッシュフローを見ていくと、通期の金融事業を除く営業キャッシュフロー(本業でどのくらいキャッシュを稼いだか)は3228億円のマイナスで、投資キャッシュは4041億円のマイナスです。これだけキャッシュフローのマイナスが続けば、手元の現預金が足りなくなることは間違いないでしょう。

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