ちなみに、多くのサービスを提供している楽天ではモバイル単体での黒字化が難しかったとしてもクロスユースが増えることで事業全体でプラスにできれば採算が取れるという強みがあります。
実際に楽天モバイルを契約することで、楽天経済圏を利用するメリットが増え、楽天市場の流通総額は年間平均で3万7683円増えたと同社は説明しています。フィンテック事業とのクロスユースの影響などもあり、そういった影響も加味して見ていく必要があります。
とはいえ、現在の赤字は極めて大きなマイナスです。そもそもの事業の収益性が改善していくかという根本的な問題があります。
また楽天は、楽天シンフォニーという楽天モバイルの通信技術を提供する事業があります。
この事業の規模は意外と大きく、22年9月時点で9カ国のオフィスに3500人の従業員を抱えています。そして13カ月で31億ドルほど受注をしています
これまでの累計売上は5.48億ドルで、直近の第4四半期単体で2.31億ドルとなり、成長が続いています。
楽天の売上規模から考えると現状はそこまで大きいわけではないですが、日本市場での実績が海外での受注につながります。
このため、クロスセルによる効果や、楽天シンフォニーなども含めて収益性をどれだけ改善していけるかも見ていく必要があるでしょう。
無料プランの廃止など大きく収益性の改善を進めていた楽天では、今回の決算で、非金融事業のキャッシュフローがプラスに転じました。これは大きな転換だったと考えられます。
とはいえモバイル事業はまだ大きな赤字である上、設備投資もさらに必要な中で手元資金は十分ではなさそうです。
今後は子会社上場や資本提携などを通じて資金調達をしていくとのこと。子会社上場がうまく進むか、どのような企業との提携を進めていくのかにも注目です。
また、モバイルは契約数で苦戦しており、事業の状況を見ても黒字化はまだまだ厳しい状況にいると考えられます。短期的にはどれだけ収益性を改善して赤字幅を削減していけるかがポイントでしょう。
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
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