多くの企業が見落とす、人的資本経営の「落し穴」 成功企業はどう解決？：人的資本経営「3つの成功要因」（1/2 ページ）

[久保田勇輝, 淺見伸之，ITmedia]

連載：人的資本経営「3つの成功要因」

有価証券報告書での開示義務化でますます注目集まる人的資本。多くの企業が手探りの状況ですが、成功には3つの要因が関係します。アビームコンサルティングの担当チームが解説します。

　経済産業省主催の人的資本経営コンソーシアムが2022年8月25日に発足し、経営理論の枠を超えた実践への関心がますます高まっています。日本における人的資本経営元年といった様相です。

　しかし足元をみると、まだまだ理論の認知理解にとどまり、実践に動けていない、または何から手を付けてよいのか分からない、といった状況があるようです。

　そもそも、人的資本経営は何をもって成功していると言えるのでしょうか？　人的資本経営の本質は、人材（資本）の価値を最大化し、企業価値の向上に寄与することです。

　それでは、企業価値の向上に寄与する人材価値の向上とは、どういう状態を指すのでしょうか。大別して、（1）生産性向上、（2）エンゲージメント向上、（3）多様な人材確保、の3つに集約されます。

　つまり、人的資本経営の成功とは、どのように人的資本に「投資」し、（1）〜（3）を達成していくかを明確にストーリー化できている状態であり、その達成に向けた具体的な施策の実践を通じて効果が刈り取られた状態と言えるでしょう。

図1：人的資本経営の核となるストーリー（図はアビームコンサルティング作成、以下同）

　それでは、人的資本経営を成功させるためには、何を始めればよいのでしょうか？　本連載では、成功のためのキーファークターを4回に分けて説明します。

　今回は、人的資本経営の根幹である、事業戦略と人材戦略の連動の難しさと解決策について、事例を踏まえて説明します。

難しい「事業戦略と人材戦略の連動」　成功のカギは？