日本商工会議所が先日発表した奇妙な調査結果からもそれがうかがえる。
『中小企業6割が賃上げ予定、うち3割は4%以上計画…日商調査』(読売新聞オンライン 3月1日)
確かこれまで最低賃金引き上げ議論の時期になると、日商は「中小企業は労働分配率が高いので賃上げをしたら潰れる」ということをよく言っていた。倒産企業があふれたら地方経済は壊滅するので、日本のためにも賃上げはできません、というのがいつもの主張だ。
実際、1月には城南信用金庫と東京新聞が中小企業を対象に調査を実施した。それによると、7割以上が「賃上げの予定なし」と回答していた。それが今回、日商が調査をしたところ、まったく逆の結果がでたのである。
岸田首相の「お願い」に応えたということなのか、それとも春闘で「最低賃金を全国一律1500円」なんて主張が飛び出したので、「そんなバカなことをしなくても、中小企業だって着々と賃上げするぞ」と社会にアピールして、火消しに動いているのか――。
真相は分からない。ただ、ひとつだけ言えるのは、こういうニュースがあふれることで、「賃上げは経営者ががんばって実現するものなので、無理に最低賃金を引き上げないほうがいい」という世界とは真逆の考え方が、より広まってしまうということだ。
ということは、これからもしばらく日本の賃金は上がらないということだ。ただ、それならばまだマシでもっと最悪なのは、「最低賃金の引き上げはします。でも、その引き上げ分は税金で中小企業に補てんします」みたいなことを言い出すことだ。
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