「SNSで話題のあの商品はどうやって開発したの?」「なぜこの会社はこんな取り組みを進めているの?」ちょっと気になっていた企業の“なぜ”をコンパクトに紹介します。
サービスや製品に込めた思いや苦労話など、担当者にしか分からない「裏側」を徹底取材。仕事が忙しくて、じっくりと情報を得ることができない人でも読めるよう、できるだけ簡潔にまとめています。テレワーク中の息抜きや移動時間、就寝前に「3分インタビュー」でサクッと情報収集!
肌を刺すような寒さが徐々に和らぎ、過ごしやすい季節が近づいてきた。ピクニックや花見など外出する機会も増えてくる。ただ、そうなると気になるのが花粉だ。
外に一歩出ただけで鼻はぐじゅぐじゅ、目はしょぼしょぼ……。自宅に引きこもっていてもどこから入り込んできたのか、花粉に悩まされる。
ティッシュ箱をわきに抱え「全く仕事になりゃしない」と嘆いているビジネスパーソンも少なくないだろう。パナソニックの調査によると、花粉症を患うビジネスパーソンの約8割が「花粉症による仕事のパフォーマンス低下」を訴えているという。その経済損失額は1日当たり約2215億円に上るというから驚きだ。
仕事の生産性を下げる花粉症対策として「花粉症手当」を導入している企業がある――従業員のエンゲージメント調査などを手掛けるラフール(東京都中央区)だ。夢のような手当の詳細をラフール広報担当の大澤直人さんに聞いた。
――花粉症手当とはどういう福利厚生なのでしょうか?
大澤さん: 病院の診察費と処方箋代を会社が支給しています。回数制限はありませんが、一回の上限金額は5000円に設定しています。私は年4回(春2回、秋2回)ほど利用します。そのほか、高級ティッシュや高級マスク、目薬などの花粉症対策グッズを現物支給しています。
――どういった経緯で導入に至ったのですか?
大澤さん: もともと経営陣が重度の花粉症を患っていて、花粉症による集中力・生産性の低下を感じていたようです。社員にもヒアリングしたところ、該当する社員も多く、生産性の低下を防ぐために2018年から導入しました。
――利用が殺到しそうですね。予算的にはどれくらい確保されているのでしょうか?
大澤さん: 制度の対象者は正社員のみで、年間30万円ほどを想定しています。
――導入後、利用者からはどういった意見が挙がっていますか?
大澤さん: 花粉症歴10年の30代男性社員からは「市販薬を飲んだり、ある程度は我慢していたが、この時期になると目の痒みや鼻詰まりで仕事に集中ができないことがしばしばあった。花粉症手当のおかげで病院へ行くハードルが下がり、行ってみたところ、自分にあった薬や点眼薬や点鼻薬を処方してくれ、症状がだいぶ軽くなった。もっと早く行っておけばよかったと思う。花粉症対策グッズも支給してくれるので本当にありがたい」といったコメントがありました。
もちろん花粉症手当だけの効果ではないですが、集中力アップや仕事にかける時間の短縮により、導入前後で残業時間10%削減、営業受注件数1.3倍といった効果も見られました。
そのほか、他の福利厚生の利用率が高まりました。花粉症手当利用をきっかけに「福利厚生をもっと使っていいんだ」という空気感が醸成され、他の手当や制度利用につながっています。
東京都の発表によると、東京都内で飛散する花粉の量は昨年の2.7倍に上るという。毎年のように情報番組で「ここ10年で一番の飛散」と発表されており、もはや花粉症は「国民病」ともいえるレベルだ。
意外な切り口で生産性向上を実現する花粉症手当、今後さまざまな企業の福利厚生として広がっていくかもしれない。
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