「閉鎖は適切というよりも、仕方のない措置だと思います。当初はごく少数の人が迷惑行為をしていたのでしょうが、それらを見て同じタイプの人が集まってきてしまったのでしょう」
こう話すのは「迷惑学」を提唱し、『迷惑行為はなぜなくならないのか?「迷惑学」から見た日本社会』(光文社新書)などの著書がある金城学院大学の北折充隆教授(社会心理学)だ。
迷惑行為が引き金となり、公共空間が利用禁止に追い込まれるケースは後を絶たない。漁港や防波堤付近で、釣り客の迷惑駐車などの問題が発生し、「釣り禁止」となる事例もある。無料のキャンプ場などでごみの放置や騒音が深刻化し、有料化に踏み切るケースも増えている。
北折教授は「99%以上の人がきちんと利用していても、1%の非常識な人がいるせいで、こういう閉鎖に及ぶといった問題は、実は多いと思います」と話す。
こうした迷惑行為を防ぐ有効な手立てはあるのだろうか。北折教授が迷惑行為を思いとどまらせる手段としてよく挙げるのが、羞恥心を喚起させる方法だ。
かつて、福岡県警が暴走族を「珍走団」(ちんそうだん)と命名し、暴走族が「カッコよくない」ものであることをアピールした事例がある。侮蔑的なニュアンスを含んだ命名で、自発的な抑止効果を期待するものだ。
ほかにも、「インスタ映え」の写真を撮ろうと必死になるあまり、周囲への配慮が行き届かない撮影者を「インスタ蝿」と表現するのも同様の方法だ。
「人をぶっちゃダメなんだよ」
「よっぱらったら、何してもいいの?」
たどたどしい子どもの字で書かれたポスター。駅構内に貼られたものを目にしたことがある人も多いのではないだろうか。
全国73社の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会が2019年に作成した、駅員への暴力禁止を訴えるマナーポスターだ。担当者は「大人にとって当たり前のことを、純粋な子どもの視点からのメッセージとして出すことで、大人をはっとさせ、暴力行為の未然防止につなげるキャッチコピーとしました」と振り返る。
デザインも白い背景に文字やイラストを子どもらしく描くことで、メッセージの効果を増大させている。
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