ちょっとホンダの先行きが不安になる決算だが、同社自身が、次の期をどう見ているかはこの図を見ると分かる。まず販売が一気に好転する見通しである。台数が伸び、台当たりの利益も伸びる。「それはどうやって?」に対する答えはこの図中で探す限り「インセンティブ」、つまり販売奨励金ということになる。
メインマーケットである中国や米国でよほど強力な新型車があるのかと見てみると、今回の決算の説明範囲では、中国マーケットに投入予定の「e:N」シリーズ4台のBEVのみである。資料には記載がないが、米国で22年末に投入したSUVの新型「パイロット」、もしくは年明けにリリースした新型「CR-V」に手応えを感じているのかもしれない。
GMと共同開発の期待のフル電動SUV「PROLOGUE(プロローグ)」は24年発売と予告されているので、デビューが最速であっても、第4四半期に多少入る程度で、今期の巻き返しの原動力には間に合わない。そのあたりの戦略は今回の資料ではほぼ触れていない。
また商品力向上に合わせて、ふさわしい売価への改定も進める予定で、これは平たくいえば値上げで台当たり利益を稼ぐということだ。新型車を投入すれば旧モデルより価格が上がるのは一般的なことだし、話を中国に限定すれば、日本の自動車メーカーが民族系メーカーと戦うとしたら、高付加価値戦略しか取れないのは自明なので、戦略として間違っているわけではない。
ただし、値上げだけではちょっとV字回復の理由にはなりそうもない。繰り返しになるが、これだけ強気のV字回復を見込むのであれば、そのストーリーをもう少し説明して欲しい。それは後述する日産の説明が(多少の誇張は含みながらも)参考になると思う。
以下は若干行間を読むような話になるが、今のホンダの問題は、第一にマーケットが偏りすぎており、地域経済の影響を受けすぎることだろう。米国はともかく中国は政治的決定で何が起こるか分からない。せめて北米の比率を中国と同等までは上げたい。目標達成には北米でミッドサイズから上のSUVの台数をさばかないと厳しいのではないか。数値目標の高さとその達成シナリオの曖昧(あいまい)さを見ていると、どうも「中国も米国も、景気さえ回復すれば売り上げが帰ってくるという読み」に見えてしまう。
筆者が見る限り、どちらのマーケットもそんなに簡単に回復するかどうかは疑わしく思える。少し前の日産の状態を思い出してしまう。自動車メーカーなのだから、売れる商品を出さなければ利益は上がらない。願わくば、「そんなことわざわざ言わないだけでちゃんとやっていますよ」という話であって欲しい。
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