Amazonや楽天といった大手ECサイトでは質よりも価格が優先される傾向が強まる。アカデミックな睡眠科学に基づいた商品開発をしている西川だけに、「このままでは値段で負けてしまう」危険性があったのだ。
デフレスパイラルに陥るのを防ぐために、商品の機能だけでなく、使い心地やサービスまで含めた「価値」を消費者に伝える必要があった。
「テレビCMのようなマス広告は認知拡大には効果的なのですが、商品の価値までは十分に伝えきれないと感じています。この課題を解決するためには、実際に使った人の体験談や、『口コミ』という人と人のつながりが効果を発揮するのではないかと考えました。その手段の一つとして、オウンドメディアを通じたコミュニティーづくりを思いついたのです」(佐藤氏)
お尻のまくら「Keeps クッション」は、商品部から「眠ラボの会員に意見を聞いてもいたい」と依頼を受けた商品の一つである。
そもそも発案のきっかけは新型コロナの流行によって在宅ワークが増える中、腰痛に悩む開発者が「Triangle Support System」という技術を腰痛に生かせないかと考えたことだった。Triangle Support Systemとは、日本睡眠科学研究所が開発したもので、坐骨・仙骨・大腿部の3点でバランスよく支えることによって、ラクな姿勢を自然に保てるようにする技術だという。
睡眠中に無意識に動いてしまう身体を支え、首や腰への負荷を少しでも減らそうと、長年研究してきた西川ならではの技術だ。これを座り姿勢にも生かそうという試みがKeepsクッションである。
ただ、この技術をどのように生かすのか、求められる素材感や形状は何かなど、悩ましいところが多かった。そこで、眠ラボ会員を活用してニーズを調査することにしたのだ。
2021年12月に眠ラボ会員にアンケート参加を呼びかけたところ、30人のモニターから約150件の声が寄せられた。浮かび上がってきたニーズはどのようなものだったのだろうか。
「クッションを購入する際に重要視するものは何かという質問に対し、座り心地と姿勢保持という意見が大多数を占めていました。面白かったのは、オフィスでもリビングでも使いたいという声がすごく多かったことです。つまり、腰痛改善や姿勢維持ができて、どこでも使えるというところが最大のポイントだと分かりました」(長尾氏)
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