セブン&アイの井阪隆一社長は4月27日、共同通信のインタビューでイトーヨーカ堂を中核とするスーパー事業について、3年後の株式上場を視野に入れていると明らかにした。上場を可能にするだけの成長戦略、それの第一歩が今回の合併だ。
日本のスーパーは、バックヤードで野菜や果物、肉や魚など生鮮食品のカット・パック詰め、総菜の調理などを行っている。一見、消費者にとって当たり前の風景だが、これはとても非効率だと専門家は指摘する。「店舗ごとにバックヤードを設置すると、その分の人件費・電気代がかかります。昨今、これらの費用は高騰しており、店舗の経営を圧迫しているのです」(小売・流通アナリストの中井彰人氏)
そこでセブン&アイは、バックヤード機能を中央に集約する方式を確立しようとしている。プロセスセンターで生鮮食品の加工を、セントラルキッチンで総菜を調理を一気に行い、加工済みの食品や総菜を、店舗に配送する。こうすることで各店舗にバックヤードが不要になり、その分の人件費や電気代を削減することが可能となる。「その結果、損益分岐点が一気に下がります。競合店舗より売り上げが低くても、利益を確保することが可能となるのです。また、セブンイレブンで鍛えた物流・配送のノウハウを活用することができます」(中井氏)
ちなみに、セントラルキッチンにはヨークベニマルのノウハウが生かされるという。「総菜の味付けや、どこまでを加工してどこから店舗に任せるかなど、東北最強のスーパーであるヨークベニマルの力を借りるようです」(中井氏)
この方式を確立するためには組織統合が必要であり、その結果が今回の合併というわけだ。「セブン&アイは、現在SIPストア構想も進めています。SIPの体制を整えたのち合流するでしょう。最終的には、首都圏のシェア首位を奪い返し、上場を実現したいといえます」(中井氏)
しかし、この大きな構想には懸念点もあると中井氏は指摘する。「セブン&アイはかつて、グループ同士での利益の食い合いをするという失敗をしています。敵を倒すだけでなく同士討ちになる可能性もあるということです。目先の売り上げや成長だけを注視するのではなく、オーナーへの配慮が不可欠でしょう」
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