まず梶田氏らが取り組んだのは、マニュアルを思い切って捨てることだった。その理由について、梶田氏は「本人たちが考えることをやめてしまうから」と説明する。
「以前のコールセンターでは厳密な対応マニュアルを用意していて、トーク内容や順番も一律に決まっていました。しかしマニュアルがあると、先入観が入ってしまってお客さまの声を拾えなくなってしまうんです。だからなるべく体当たりでコツをつかんでもらうようにしました」(梶田氏)
その代わりに着手したのが、オペレーターの中でもトップ成績を誇るプレーヤーたちを分析することである。トッププレーヤーたちのトークは何が違うのか、当時の管理職らと夜中までさんざん議論しあったところ、次のような5つの共通点があることが分かった。
彼らのトークを分析すると、何気ない会話をしているようで、実は上記のポイントを押さえながら意識的に会話をリードしていることが分かった。着物を売りたいと電話をかけてきた年配女性のケースから読み解いていこう。
彼らは電話をかけてきた理由を聞きながら、女性が何気なくつぶやいた「子どもが独立して家が寂しくなった……」という言葉を聞き逃さず話を深堀っていく。子どもが独立したということは、使われていないおもちゃがあると推察できるからだ(1:嗅覚)。
すかさず「では、もう使ってないおもちゃはありませんか? テレビボードの下にゲーム機などはありませんか?」と、相手の住まいを想像しながら質問を重ねていく(2:判断)。
ゲーム機があることが分かったら、今度は「思い出の品として残しておくのもよいですが、私たちが買い取れば、そのお金でお孫さんに新しいおもちゃを買えますよ」と、顧客の背中を押す(3:駆け引き)。
つまりインサイドセールスの真骨頂は、顧客が発するワードを拾って、いかに次から次へと連想ゲームにようにネタ(=資産)を引き出せるかにかかっているのだ。
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