トップセールスのトークを分析した結果、バイセルはKPIの評価方法も見直すことにした。コールセンター時代のKPIは、どれだけアポイントを獲得できたかという「量」に焦点を当てていたが、現在はどれだけ高ランクな顧客とのアポイントが取れたかという「質」を重視する方向に変えたのだ。
「質」を上げるため、バイセルでは14のチームリーダーが所属するメンバー約6〜7人の育成を担っている。顧客との通話は全て録音し、トークのどこがトッププレーヤーに共通する5つの項目に当てはまるか分類する。そして何が足りなかったのか、どこをどう改善すべきかをリーダーとメンバーが個別ですり合わせていくという徹底ぶりだ。
自分の録音音声に限らず、他のメンバーのものも使って毎日のように議論を重ねた。「サクセスシェア」と呼ぶこの時間が、メンバー同士の活発なコミュニケーションを生むきっかけになっているようだ。
さらに梶田氏たちリーダーは、メンバーへの指導の際に肯定から入ることも意識する。決して社員の個性を否定するような強引なやり方はしないという。
「大切なことは『スタッフの個性を尊重する』ことです。付きっきりの指導を求めるメンバーもいれば、放っておいてほしいメンバーもいます。それぞれの個性にあった教育をするように心がけています」(梶田氏)
実際、まったく「嗅覚」が効かないという特殊な社員もいたが、別の部分に強みを見いだすことで弱点をカバーできたという。
「苦手分野については、最低限押さえてほしいポイントだけを伝えます。その他の分野で本人の強みを伸ばした結果、その社員の成績もアップしました」(梶田氏)
コンタクトセンターからインサイドセールスに改革以来、バイセルでは2〜3カ月で数字に変化が表れ始めた。これまで、顧客との通話のほとんどは資産を引き出す商談ではなく、マニュアルに沿った定型文を読み上げるだけの時間になっていた。当時、平均10分の通話時間の中で商談時間は2分を切る程度だったが、現在は3分半〜4分に伸びた。通話時間はほぼ変わらず、商談の質向上と効率化を実現したのだ。
「たった1〜2分伸びただけですが、それが結果的に高ランク客の獲得率アップにつながっています。効果を実感するのに半年はかかると予想していたので、これは非常に驚きました」(梶田氏)
成果を踏まえて梶田氏は「リーダーは方法を教えるのではなく、考え方を教えることが大事」と持論を展開した。社員一人一人が自分なりのマニュアル(=型)をつくることが大切だという。
「汎用的なマニュアルは便利ですが、社員を堕落させます。あえて不便にすることによって、自分で工夫したり、人に聞いたり、行動することが肝心なのです。そのためにはまずリーダーが率先して、メンバーが自分の型をつくれるよう働きかける必要があります」(梶田氏)
最後に、梶田氏は「当社のインサイドセールスは人が肝だと考えています」と締めくくった。営業効率を向上させるうえでマニュアルや合理化も大切だが、肝心の「心」がなければ顧客を動かすことはできない。バイセルの事例はオンライン化によって現代人が忘れがちな「心」や「個性」を大切しながら、生産性向上もできると示す好事例といえるだろう。
【開催期間】2023年8月22日(火)〜9月10日(日)
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
【本記事読者へのおすすめ講演】
・経営にインパクトを与える「稼げるカスタマーサクセス」に転換せよ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング